Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

書評

紅いオレンジ

「紅いオレンジ」ハリエット・タイス。 物語の冒頭、わずか2ページの不思議な独白から始まる。慎重に首縄をセットし、締め切らないように長さを調整し、テーブルの上には紅いオレンジを切って置いてある。 そこから場面が始まり、主人公のロンドン在住の女…

ダブルマリッジ

「ダブルマリッジ」橘玲。 大手商社勤務の憲一は50歳で、妻里美と大学生の娘マリがいる。里美は元役員の娘で、そのため憲一はエリートコースに乗っていると見られている。 その憲一は急な海外出張でパスポートの更新のために、娘のマリに戸籍謄本をとりに行…

妙麟

「妙麟」赤神諒。 戦国時代に女性の身で一軍を率いて武名をあげた人が何人かいるが、本書のタイトルの妙林尼はその中で有名な人であるらしい。私は寡聞にして知らなかった。 九州大友氏の吉岡鎮興の妻であり、夫が島津氏との耳川の戦いで戦死してしまったた…

オービタル・クラウド

「オービタル・クラウド」藤井太洋。 小説の冒頭で、テヘランの郊外。科学者のジャムシェドが気球を上げて、その動きを手計算で算出する場面から始まる。かの国はインターネットも、科学者が気軽に使えるコンピュータもない。日本の渋谷で「メテオニュース」…

四畳半神話体系

「四畳半神話大系」森見登美彦。 この人の本は、以前にデビュー作の「太陽の塔」を読んで、結構面白かった記憶がある。世間的には高学歴だが、実はイケてない京大生の、バラ色のキャンパスライフとは正反対の鬱屈と自虐が面白かったのだ。もちろん、話はそれ…

叫びと祈り

「叫びと祈り」梓崎優。 2011年このミス国内3位。 ミステリはかなり好きなのだが、最近では海外作品ばかり読んでおり、国内作品はご無沙汰である。なんというか、ストーリーが単線すぎて面白くない(トリックなどは精緻なのだが)と思ってしまうためだ。 し…

サピエンス全史(上)

サピエンス全史(上)ユヴァル・ノア・ハラリ。 この週末は台風の影響で、ずっと今一つの天候だった。そこで自転車趣味はそこそこにして、読書タイムにした。 しばらく前に入手していた本書をゆっくりと読んだ。ずいぶん話題になった本だが、未読だった。(…

決算!忠臣蔵

「決算!忠臣蔵」中村義洋。 同名の映画の監督による小説化作品である。小説を映画化する例は多々あるが、その逆パターン。ちと調べてみると、映画は大コケしたらしい。この監督の決算が気になるところではある。 舞台は皆さんよくご存知の忠臣蔵。赤穂で「…

ワン・モア・ヌーク

「ワン・モア・ヌーク」藤井太洋。 題名の「ヌーク」は「ニュークリア」つまり核のことである。超訳すると「もう一発、核を」となる。それでは出版が危ないので、カタカナになったのかな。日本SF大賞受賞作。 物語の冒頭では、イラクの核査察でやってきたCIA…

無実

「無実」ジョン・コラピント。 今日は雨もあがり、いったんは自転車を出したのだが、そのとたん、霧雨のような雨が強くなった。たちまち、しっとりと濡れてくる有様なので、早々にあきらめて帰還。音楽を聴きつつ、読書タイムとする。 ウルリクソンはかろう…

開かれた瞳孔

「開かれた瞳孔」カリン・スローター。 帰京の電車の中で読んだ。著者は、大ヒットをとばしている女流ミステリ作家で、本作はその「幻のデビュー作」。作品の質は高くても、うまく編集部の目にひっかかって、なにがしかの賞をとって上梓、デビューにこぎつけ…

風立ちぬ

「風立ちぬ」堀辰雄。 私達の世代で「風立ちぬ」といえば松田聖子の楽曲であり、しばらく時代が下ると宮崎駿監督の名アニメである。その宮崎監督は「最近のやつは全く勉強していない!」といって怒っていたそうだ。アニメ「風立ちぬ」のタイトルの意味をファ…

たとえ天が墜ちようとも

「たとえ天が墜ちようとも」アレン・エスケス。 物語の冒頭、高級住宅街の中のゴミ捨て場の路地で、女性の死体が発見される。被害者は刑事弁護士プルイットの妻で、財産家で有名だった。刑事マックスは現場に駆けつけ、捜査を開始する。調べると、プルイット…

RED

「RED」島本理生。 さきに「ファーストラヴ」を読んで、意外に(?!)面白く読んだので、同じ作者の作品を読もうと思い、適当に選んだのがこれ。平たくいえば、古書店にたまたま転がっていたのであります。 主人公は30代の主婦、塔子。夫の実家に同居し、4…

賤ヶ岳の鬼

「賤ヶ岳の鬼」吉川永青。 舞台は戦国時代、あの本能寺の変である。一報を聞いた柴田勝家は驚くが、すぐに甥の佐久間盛政を伴って出撃し、まず安土城に向かう。これに先立って、織田家の重臣、佐久間信盛は石山本願寺攻めの主将でありながら何も功績がないと…

ファーストラヴ

「ファーストラヴ」島本理生。第一五九回直木賞受賞作。 主人公は臨床心理士の由紀である。カメラマンの我聞と結婚して、一児の母でもある。しかし、時間的に余裕があることから、夫の我聞が主夫業をしており、由紀の方は病院勤務のかたわらテレビのコメンテ…

はるなつふゆと七福神

「はるなつふゆと七福神」賽助。「本のサナギ賞」受賞作。本のサナギ賞というのは、書店員が選ぶ「これから売れて欲しい本」に与えられる賞のようで、現場での期待値が高いということであろう。それに興味を惹かれて手に取った。 主人公は東京のアパートで暮…

Gene Mapper

「Gene mapper -full build-」藤井太洋。カタカナで表記すると「ジーンマッパー フルビルド」。 主人公の林田はジーンマッパーと呼ばれる遺伝子組み換え作物のデザイナーである。業界最大手のL&B社から仕事を受注している。かつての遺伝子組換え作物は、天然…

逃げる幻

「逃げる幻」ヘレン・マクロイ。 舞台は1945年、終戦の年のスコットランド。主人公のダンバーは米軍所属の精神科医で、休暇を利用してスコットランドのネス村にやってくる。その飛行機の機内で、地元の貴族ネス卿に出会う。(このネス村は、のちに「ネス湖の…

徴産制

「徴産制」田中兆子。 おもしろそうなタイトルに惹かれて購入。一応、SF小説ということになるのですが、サイエンスではなくてスペキュレイティブ(思弁的)だと思います。 未来の日本。スミダウィルスなる若い女性ばかりを死に至らしめる疫病が大流行し、と…

美しいこと

「美しいこと」木原音瀬。 ついに、single40の書評に初のBL小説が登場である(笑)。実はそうとは知らないで買った。裏表紙の紹介文に「女装をする趣味の男が云々、、、」と書いてあったので、ちょっと興味を惹かれたのである。 主人公の松岡は敏腕営業マン…

潔白の法則

「潔白の法則 リンカーン弁護士」マイクル・コナリー。 コナリー先生のリンカーン弁護士シリーズ。絶対の安心感(笑)。 物語の冒頭で、主人公の弁護士ハラーは警官に呼び止められる。飲酒運転の取締かと思われたのだが、トランクから血液のようなものが滴っ…

ダブルエージェント 明智光秀

「ダブルエージェント 明智光秀」波多野聖。 明智光秀は、最初は足利義昭に仕え、織田信長に使者として会って、そこで織田信長の家臣になる。しかし、足利の家臣を止めたわけではない。つまり、両方の家臣だった、ということになる。不思議な話だが、当時は…

殺す女

「殺す女」ウェイン・バーカム。 古書店で捨て値で転がっていた。暇つぶしに読んでみたら、あらあら。。。 冒頭は悲惨な殺人シーン。飲んだくれの父親が、幼い娘ラッキーの前で母を殺す。ワインボトルで母を撲殺したのである。 父は、自ら警察を呼び、自分で…

風渡る

「風渡る」葉室麟。 以前に「風の軍師」を読んだことがあって、その前日譚が本書だそうである。 それを最近知ったので、なんとなく読まないと落ち着かなくなって読んだ(笑)。 黒田官兵衛が丹波から出てきて秀吉の天下取りに協力し、本能寺の変を演出し、や…

ハリー・クバート事件

「ハリー・クバート事件」ジョエル・ディケール。 翻訳ミステリの話題作だったのだが、上下1,000ページに近いという大作なので、なかなか手が伸びなかった。ようやく読んだのだが、これは面白い。 主人公のマークスは作家としてデビュー作が大当たりし、すっ…

三体Ⅲ死神永世

「三体Ⅲ死神永世」劉慈欣。 昨年末に「三体Ⅱ黒暗森林」を読んで、あまりの凄さに衝撃を受けたところ、知人が「三体Ⅲはさらにすごい」と教えてくれた。 私の考えでは「黒暗森林」は究極の回答で、あれを超えるともう地球を壊すしかないじゃないか、それじゃあ…

八本目の槍

「八本目の槍」今村翔吾。 今年最後に読んだ本が大当たり。普段の行いが良いのでしょうか(苦笑) まあ、直木賞受賞作なので、当然ですが、ほんとに素晴らしい。 舞台は豊臣時代。 秀吉の「賤ヶ岳の戦い」で活躍した「七本槍」とと呼ばれる小姓たちのその後…

禁忌

「禁忌」フェルデナント・フォン・シーラッハ。 シーラッハの小説は「全部大当たり」という、奇跡としかいいようがない粒揃いの作品であるわけだ。異論は認めない。で、その著者による長編第二作。 前半の主人公はエッシュブルクという名家の子息として生ま…

ワシントン封印工作

「ワシントン封印工作」佐々木譲。 毎年、12月8日が来ると、日米開戦のことを思うわけである。私は「だまし打ち」には与しないほうで、あんなギリギリの交渉をやっていて、のんびりと日曜の朝寝を決め込んでいた米軍がアホなだけだと思っている。「スキあ…