Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ボトムズ

ボトムズ」ジョー・R・ランズデール。

既に70歳を過ぎた老人が、過去の追憶を語るというフレームで、少年時代の殺人事件を語る。この構成は、テキサス州における黒人差別がいかに酷かったかを語るのに必要だからである。

少年(後の老人)は、妹と一緒に森を探検中に、黒人売春婦の殺人被害者の死体を発見する。少年の父親は保安官である。
当時のテキサス州は、奴隷解放されたとはいえ、まだまだ差別がひどかった。「黒人のことには介入しない」が白人の社会の掟になっており、少年の父親も村人の「どうせ黒人が犯人で、黒人が被害者なんだから放っておけ」という圧力に悩まされる。
しかし、事件は連続殺人事件へと発展し、ついにある日、白人女性まで被害者になってしまう。
少年の父親は、彼女のサイフを拾ってしまった老黒人男性を逮捕する。彼がそんな男ではないことは、よくわかっていたのだが、証拠がある以上、一応事情を聞かねばならないと考えてのことであった。
しかし、少年の父親が老黒人を逮捕したことがばれてしまい、白人の村人は彼を「吊す」。ビリー・ホリディの「奇妙な果実」である。
少年の父親は自分の無力さにショックを受け、酒に溺れるようになる。
それでしばらく、殺人事件は収まっていたのだが。
しかし、ついに新たな事件がおきる。
再び白人女性が殺される。
「見ろ、かれは犯人ではなかったのだ」少年の父親は、きっぱりと酒をやめ、立ち直る。
しかし、なかなか犯人を検挙することができない。
そして、お祭りの夜、ついに意外な真犯人が姿を現す。少年の妹がさらわれてしまったのだ。少年は、妹助けるために走る。。。

単なるミステリを越えた文学作品であり、人種差別に対する重大な告発であり、過ぎ去った少年時代への追憶であり、連続殺人もの作品としても抜群の完成度である。
黒人差別の描写が胸をえぐるほど、悲しい。
ほんの数十年前は、こうだった。もちろん、今だって、ホントはある話だし、我々黄色人種だって例外ではない。ドイツを同盟国だと思っていたのは日本だけだった。向こうはそんなこと、毛ほども思っちゃいなかった。日本人がドイツに行って受ける冷然とした無視の態度は、海外旅行の経験がある人ならお分かりだろう。

評価は☆☆☆。
文句なし、である。
こういう作品に、たまに巡りあうので、本を読むのを止められないのだ。