Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

載らなくて結構かと。


ミシュラン東京版がいよいよ発売されるそうで。
東京の3つ星は8店。
おおかたの疑問と期待を集めた「鮨や蕎麦は、果たして星がつくのか?」も、少なくとも寿司店は2つの3つ星店が出たわけです。

だけど、ねえ。ちょっと思うんだけど。

きっと、3つ星をつけた店の敷居は、また高くなってしまうのじゃないかな。
次郎なんて、今でも、ランチでさえバカバカしいような値段がしますなあ。

何も、美味い不味いをフランス人に決めて貰わなくても結構じゃないか。自分で美味いと思うものを食べりゃいい、といいつつ、思わず気になるのが人情ってもんでしょう。

そこで、例によって、つまらん話をつらつらと。

そもそも、鮨は江戸時代のファーストフードである。江戸時代の鮨の面影を残しているのは「笹巻けぬきすし」じゃないか、と思うが、あれをみると、鮨というよりはおにぎりに近いです。手早く腹ごしらえをするのに、ちまちま食っていたんじゃ間に合わないからで。
で、当時はチマチマ食べる「蕎麦」のほうが鮨よりも高級だったようですな。

寿司店が高級店になったのは、戦後に冷蔵庫が普及してからだそうです。そこで、誰かが「蕎麦屋」と同じく、鮨屋で酒を飲むことを思いついたらしい。寿司屋も商売だから、鮨だけつまんで帰られるよりも、酒が売れるほうが良いので、さっそく冷蔵庫を活用して刺身を出すようになった、と聞いたことがあります。冷蔵がない時代は、そりゃ刺身はムリなわけで。
鮨といえば「生魚とコメ」と思う我々ですから、今の自称「江戸前鮨」は、実は江戸の鮨とは似ても似つかない代物になっているのですな。

というわけで。
元「ファーストフード」の末裔の古い江戸前の店に行くと、やっぱり最近の店とは違うのですなあ。
マグロのヅケ、なんて当然なんだけど。ところが、中はわさびじゃなくて芥子なんであります。なんと、江戸時代はわさびが貴重品で、普通は芥子だったのですよ。
卵焼きは、タマゴだけ。よく「エビのすり身」なんて入れる店がありますが、ありゃ戦後の創作です。昔はタマゴが高級品。わざわざ「不純物」を入れるわけがない。
面白いのはかんぴょう巻き。かんぴょう巻きが、中にわさびです。かんぴょうは、大変な手間がかかるわけで、だから高価なわさびを使う。
手間がかかるものが高級なので、蕎麦のほうが鮨より高級だったのと、同じ理屈ですな。
シャリの赤酢は当たり前ですが、シャリが大きいのが昔の面影でね。
今じゃネタが大きくて、シャリが小さくて高級鮨、ですからねえ。

つまり、現代の名店と、まったく違う仕事をする店もあるわけで、これが美味いのですよ。もちろん、ネタも良いのですが、食べてみるとほとんど醤油を使わない。「江戸前は醤油ナシで食べられる鮨のことです」と店主は明快。「いちいち醤油をつけるんじゃ、面倒でしょうがないやね」なるほど。

けど、こういう店は、いわゆる現代の「鮨の名店」とはかけ離れているわけです。
けどねえ。うまけりゃ、それでいいわけですよ。ふふん。

あ、店の名前は出せません。一応、取材禁止だしね。それに、へたに混んできたらイヤじゃないですか(笑)ちょくちょく行くと、あれま、女優さんやら作家先生やら、見かけた顔に結構会える店ではあります。

こんなの、ミシュランには載らんでしょう、たぶん。載らなくていいんです。そのほうが、心安らかな日々を送れるじゃないですか。おフランスにはわからん、それでいいんです。
掲載されたら、そっちのほうが困るんですよ(苦笑)