Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

健全なる精神

「健全なる精神」呉智英

帯には「爽快な笑い」とある。
呉氏を表現するのに、たぶん一番ピッタリな言葉だろうと思う。

韓国について、例の山野車輪嫌韓流」について「細かい異論はあるが、大筋で間違いではない」とあっさり書いてしまう(笑)。
その上で、こういう提言をする。「しかし、韓国には、日本の右派を沈黙させる材料がある」それは韓国が朝鮮戦争で「防共の防波堤」となってくれたことである、と断じる。
日本は、特需景気に沸いたのだが、韓国は膨大な死者を出しつつ共産主義者と戦っていたのであり、彼らの決死の奮戦がなければ、我が国の命運だって危うかったのではないか。
だから、左派は、この「防共の防波堤」となった歴史を持ちだして、韓国を擁護する言説を、、、出せるわきゃないわな(爆笑)。

「右派は情けない」と題する文章で、呉氏は、暴力団組長の葬儀を某仏教が行っていたことについて批判が巻き起こった時に、右派が沈黙していたことを挙げる。
この問題は、靖国参拝論議と通じるからである。
そもそも、右派による靖国参拝擁護論の大きな主張の柱に「日本人の宗教観によれば、死んでしまったらみんな平等、神様仏様」というのがある。死後の屍にむち打つことを、日本人はしない。
それならば、暴力団の組長も、死んでしまえば差別すべきではないではないか。仏教寺院に対して「暴力団の葬儀は拒否せよ」(それが、何千万円のお布施を貰ったかどうかは別として)という我が国の伝統をないがしろにする言説に対して、批判の一つもしないとは情けない。

さらに、その続きが「左派は情けない」である(笑)
それは、例の戸塚ヨットスクール校長、戸塚宏氏の出所にあたってのものであった。戸塚氏は、刑務所の中でも「非転向」を貫き、模範囚として早期出所することなく、満期を努めて出所してきた。
不幸な事件はあったが、一方で感謝、支持する人も多いのも事実だろう。何より、戸塚氏は国家権力と戦いつづけた英雄ではないか。なんで、獄中で権力に屈することなく、非転向を貫いた彼を讃えないのか。あー、日本の左派は情けない。。。

評価は☆☆☆。まあ、呉先生の本で、私は「ハズレ」だと思ったことはないのである。盲目的に星3つ、しかないではないか。

そこで、図に乗って、私も言うが。
例の空幕長の更迭問題であるが、とんでもないことである。そもそも、日本国憲法に定める「言論の自由」を、いったいなんと心得るか。
思うに、国家権力の見解に賛成です、などということを主張するのに「言論の自由」が必要なものか。そうではあるまい。憲法とは、そもそも「国家の行動に掣肘を加える」のが目的であるはずだ。
公務員も国民であることは疑えないことであって、労働三権を制限されていることすら憲法違反の疑いが濃厚である。
いわんや、言論の自由においてをや。
彼が、国家権力に合致しない論文を発表したかどで更迭、退職金の返納も求められるとあっては、いったい自由な言論活動とはどのようなことになるのか。
これでは、戦前の「天皇機関説」が排撃された政府による言論統制と変わるところがあるまい。
今こそ、護憲派の諸君、こぞって立ち上がり、この政府よる暴挙をすべからく徹底批判すべきである!、、、などいう「護憲派」の言説が聞かれないのは、寂しうて仕方がありませんなぁ(笑)