Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

はん亭ふたたび

景気も悪く、なにかと身辺もあわただしく、美味いモノを食うどころの話ではないのだが。
しかし、たまにはリフレッシュも必要だ。

というわけで、根津権現祭り見物に行く。
ちょっとお祭りをみて、根津の町の路地裏を散歩。
改めて気がつくと、猫が多い。猫を飼いだしたら、町中の猫に気がつくようになった。
猫が多い町は、かれらが生息できる茂みや自動車の少ない小路、餌をあげる人たちなどが多いことを意味する。
つまり、人間にとっても住みやすい町だと言える。
そういえば「銀座の猫」が有名だが、あの銀座も、一歩裏道に入ると、たくさんの猫がいる。
渋谷や新宿では見られない光景である。
私がよく行く店の主人も、残り物の魚をちょいとおすそ分けしたり、冬には雪よけをつけてやったりしていた。
暖かい人情が息づく町でもあるんだな。さすが銀座は違う、と思ったものである。

根津も最近ブームのようで、小さなギャラリーや雑貨店、カフェなどが沢山できている。
若い人も、意外に多い。
スカイツリーも出来ることだし、これから東京の東側が流行るのじゃないかと思うな。
根津、浅草、上野、日本橋など、古い町が見直されるのじゃないかしらん。

小さなギャラリーでは、死刑囚の描いた絵画を展示していた。
なかなか達者なものである。
死刑廃止を訴える小冊子が置いてある。
死刑囚であっても、芸術的才能があってなんら可笑しくはないし、死刑か否かは、彼らの行った犯罪と比べて判断すべきことである、と思う。
世界の各国が死刑廃止の趨勢にあるとはいえ、そこは「よそはよそ、うちはうち」であろう。
他人がそうだからと、理由もわからぬうちに右へならえは、それこそ「バスに乗り遅れるな」と同じ、思考停止の産物ではあるまいか。

ひとわたり散歩をし、腹も減ったので、はん亭に足が向く。
夕方5時の開店には、まだ10分ほど早かったが、若い主人が「いいですよ、どうぞ」と迎えてくれる。
着席し、ビールを飲んでいると、たちまち店は混み始めた。
お祭りで、人出がおおいようだ。商売繁盛で結構なことである。
表通りを行く御神輿を眺めながら、串揚げを食べる。
はん亭の串揚げは、まるで魔法がかかったように、軽くてサクサクと食べられる。あっさりと、実に上品で後を引かない。
大阪の「二度漬け禁止」の串カツ屋さんとは、まさに対局である。
店内のサービスも親切で、ゆったりとした時間が流れている。

串あげ6本で「一の膳」。以下、6本づつ追加していき、「三の膳」で終えることにした。満足である。
なかには、「六の膳」までいく猛者もかなり居るようであるが、さすがに40も半ばを過ぎた中年男にはつらい。

ビールは、キリンのラガーに代わっていた。これは残念であった。

あとで聞いたら、なんと、サッポロ赤星も置いてある、とのこと。
メニューには掲載されていないので、自分で申し出ると、代えてくれるらしい。
しまった、次は赤星を頼もうと決心する。

なにかと気忙しい毎日で、ささくれだった気持ちを抱えていたが、久しぶりにノンビリできた。
さすがに名店である。
明治の建物だけではなくて、ホンモノの味と豊かなホスピタリティがある。

私の中では、いつまでも、大切にしたい店なのである。