Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

血と肉を分けた者

「血と肉を分けた者」ジョン・ハーヴェイ。

イギリスのミステリ作家で、CWA章受賞、と帯にある。CWA受賞作に駄作なし、という信念を私は持っているので(笑)さっそく読んでみた。

舞台はもちろん英国で、主人公は既に定年退職した元刑事エルダーである。
妻とは離婚して、娘のキャサリンがいる。妻は、勤め先の上司と浮気していた。一度は和解し、そこで関係が切れたと思っていたが、しかし、実はひそかに続いていた。
妻の告白で離婚したのだが、一人娘とは月に1回会っている。そろそろお年頃である。

そのエルダーには、どうしても忘れがたい事件があった。
ある日、友人達と一緒に出掛けたまま行方不明になってしまった娘のスーザンである。
エルダーは、彼女の事件をもう一度、独自に捜査することにした。
当時、有力容疑者として疑っていた二人組の男、マッケナンとドナルドのうち、ドナルドが仮出所してくるからだ。
レイプし殺された被害者の少女は、スーザンと同じくらいの年頃だった。
おまけに、マッケナンは余罪をほのめかせる供述をしている。
そのドナルドが、保護司の女性を監禁し、逃走。
時を同じくして、再び少女監禁殺害事件が発生し、ドナルドの関与が強く疑われた。
捜査本部は、当時の情報に詳しいエルダーに捜査協力を依頼、エルダーは承諾する。
一方、ドナルドは移動遊園地で働く弧児のエンジェルと逃走を続ける。
自身も傷つきながらドナルドをかばうエンジェルは、ドナルドを信じようとする。
そして、自首することをすすめるのであった。

一方、服役中のマッケナンに対して、エルダーは事情聴取を実施。
すると、マッケナンは、、自分を尊敬していた元囚人の名前を告げる、と取引を持ちかける。
この取引で聞き出した名前は、ドナルドではなかった。
その人物を捜査するエルダーたちだが、そこへ、衝撃的な知らせが入ってきた。
なんと、エルダーの娘、キャサリンが行方不明になったというのである。。。

日本でも、すでに新しいカップルのうち1/3が離婚するのだという。
すると、この小説のように、たくさんの血のつながらない子供や、血はつながっているが他人の家族になってしまった子供たちが生まれるであろう。
このような少女たちが犯罪者に狙われた場合に、誰が助けてやるだろうか。
警察は、言うまでもないが、事件が起こった後でなければ動かない。
一人一人の少女を保護するのは、警備会社なら有償でできても、警官を動員するのは不可能である。
そして、その警官自身が離婚していることだってあるだろう。
この小説は、深い悲哀とかすかな愛情が丁寧に描かれているが、しかし、一種の物寂しい未来図を予想させるものである。

ところで、私はかねがね主張しているのだが、もう結婚制度はやめたほうが良いのではないか。
離婚者が珍しくない事態にまでなってしまったら、すでに結婚制度は、うっかり結婚してしまった人たちに不利を強いるだけのシステムのように思うのである。
もちろん、そもそも結婚できない場合は、こんな問題はないが(苦笑)

子女の養育や保護について、結婚制度ではない、別の制度を考えるべきときである。
男は、離婚後も養育費を支払うことになっているが、支払いをしない不届き者はいくらでもいるし、それでも次の女と結婚できてしまうのだ。
そして、女だって、それは同様なのである。

さらに遡れば、そもそも自由恋愛の必然的な結果として、結婚制度の破たんはある。
自由恋愛とは、簡単にいえば、性愛の市場原理主義である。
もっともすぐれた商品を、結婚の時点で選んでいるはずである。
しかしながら、それは単に比較優位であるから、事情の変化によって、簡単に変わるものである。
昔は一番好ましいと思った男性だが、今はそうではなく、別の男性が好ましくなった、とする。
すると、一番好ましい男性としない結婚は、それは偽りではないか。
「恋愛バンザイ、自分に正直に生きるのは素晴らしい!」
はい、結果は見てのとおり、である。誰でも予想できる事態が起きているだけの話である。
だから愚行だというのである。

男女別姓などという下らん議論をする前に、結婚制度の廃止を検討するがいい。
よほど、根本的な解決策であること、疑いなしでありますぞ(笑)