Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

絶食系礼賛

最近では「草食系」を通り越して「絶食系」が増えているそうである。
草でも食っているうちは、まだアマイ。
今や「食わない」のである。
いわゆる「交際経験なし」が20台で40%、30台になっても33%なのだそうだ。
ちなみに、リア充「恋人がいる」のは、20台では22%、30代では15%なのだそうである。(いずれも男性)。
今や、リア充よりも絶食系男子のほうが、主流派なのである。

この風潮は、礼賛に値する。

私も、若かりし頃は、なにをトチ狂ったか、女子のケツを追いかけたものである(遠い目)。
時は80年代バブルに突入し、男どもは岡サーファーにアフタースキー専門であり、イケテル女はディスコでお立ち台にのぼり、扇を振っていたのである。テレビCMは山下達郎のクリスマスイブであり、クリスマスが一番、日本でコンドームの売れる日であった。イエス・キリストがこの光景をご覧になったら、きっと卒倒されること間違いなしである。

以上のどの風景も、今思い出せば、意義の深いものはひとつもない。
男女交際こそ、資本主義の最たるもの、恋愛こそ自由競争で市場競争原理むき出しの論理がまかり通る戦場であったのだ。
そこにあるのは、ついには「勝ち組」と「負け組」、クリスマスに一人のアパートに帰る奴を冷笑する勝ち組の笑い声がコダマする巷の風景だったのだ。

そんな世界に、拒否を示す人間が増えた。
ごく当然の帰結であろう。

さらに、時代の変化もあるだろう。
80年代バブルのころから、さらに時代は変わった。
電話はケータイになり、トイレは温水洗浄がつき、地下鉄にもエアコンがついた。
夏だからといって、汗まみれの人とくっつくこともない。
世の中は、どんどん清潔になった。

子供のころには「イケナイ」ことを、大人になった瞬間にパンツ脱いでやれ、といっても、できないほうが普通であろう。ありていにいって、不潔だと考えても不思議はない。
上記の「絶食系」の中には、そもそも行為自体に「嫌悪感を持つ」という人も増えているそうである。
理由はわからないが、おそらく「不潔だと思う」からであろう。
清潔か不潔かと言われたら、やっぱり不潔である。

これはすべて都市化のなせる業である。
都市は、自然状態でなく、人間の脳が考えた世界が外界になったところである。
そこに、自然は入り込めない。
人前で行為をすれば、それはワイセツ罪という犯罪なのである。
「自然」はトイレと同じく、密室に囲い込まれ、外に出てこない。
アタマで考えた世界が、世界を覆い始める。

へんな言い方だが、私は、それを自然に対する人間の頭脳の勝利だと思う。だとすれば、悪い事態ではない。

かつて、小谷野敦の「もてない男」に対して、フェミニスト上野千鶴子は「一生オ○ニーして死んでいただければ」とのたまった。
上野先生も、世の中が自分の思い通りになって、さぞご満悦のことであろうなあ。

男と女がなくなれば、人間に残るのはコミュニケーションだけである。
それは、今や通信である。
しかし、通信は、自然ではない。通信で子供が出来ないからだ。

今にみよ。次代はきっと、通信販売のように、通信で子供が得られるようになるであろうと思う。
それが、人間の「考える」世界であるから。

考えずとも「あった」世界は、かくて、ますます居場所を失う。
場所を問わず「犯罪」とされる日も、そう遠くはないであろうか。