Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

小鼠 ニューヨークを侵略

「小鼠 ニューヨークを侵略」レナード・ウィバーリー。

グランド・フェンウィック大公国はアルプスの村がひょんな歴史的経緯から独立した小国である。
女王は22歳のうら若きグロリア。
彼女は、就任早々に大変な国難に見舞われる。
この平和な国も、その平和ゆえに人口が増えていき、財政危機に直面していたのだ。
グランド・フェンウィック大公国の主要な(唯一の)輸出品は山の斜面で栽培されるブドウからつくったワインである。
そこで、国を2分した論争が起こる。
改革派は、このワインを10%だけ水で薄めるべきである、という。その増産分は、当面の財政危機を救うであろう。
保守派は、これに大反対である。そんなことをすれば、ワインのブランドは地に落ちる。国を救うどころか、かえって輸出品を失う、というのである。
しかし、その保守派も改革派から「では、財政危機の対案があるのか?」といわれると、何もないのである。

ここで、グロリア女王は名案を思いつく。
それは、米国に宣戦布告することである。
そして、すぐに降伏するのである。
すると、米国は敗戦国に対してあらゆる経済支援を行って復旧を手助けすることになる。
これぞ、国難を救う名案ではないか!

こうして、グランド・フェンウィック大公国は、欧州の駐米事務官に郵便で宣戦布告書面を送りつけた。もっとも、冗談だと思われた手紙はバカンス先の湖で濡れてしまい自動車のラジエータに貼り付けて乾かされたが。。。
14世紀そのままの武装つまり鎧に槍、弓をかついだ20名の部隊が編成され、ニューヨーク目指してオンボロ帆船を借りて出発した。

ところが、ちょうどその時、米国では水爆を上回る威力の爆弾、カジウム爆弾(通称Q爆弾)が開発されて、一般市民を巻き込んだ大規模な避難訓練が行われていた。
かくして、ニューヨーク市民がみんな地下鉄や地下街に逃げ込み、人っ子ひとりいなくなったニューヨークの町に上陸したグランド・フェンウィック大公国は、どうやら戦争に勝ってしまったらしいのである。
負けるはずが勝ってしまったグロリア女王は、とても米国を支援する力はないと途方にくれる。。。


リヒテンシュタインモナコのような小国が、財政難から米国に宣戦布告するという驚天動地、抱腹絶倒の物語である。
読みながら、もう腹筋が痛くて仕方がない。
理屈抜きで面白い名作である。
評価は文句なしで☆☆☆。

だいたい、宣戦布告の理由が「グランド・フェンウィック大公国のワインとそっくりのワインが米国で製造販売されており、何度か是正措置を求めたが無視されたから」である。
米国大統領はアタマを抱えて言う。
「まあ、あの国じゃあ、ほかに理由も思いつかないだろうしなあ」
わーっはっはっは!

そもそも、宣戦布告などしないで、どうして素直に経済援助を求めないのか?
それはもちろん、そのようなことをするのは恥だから、である(爆笑)
古来、他国から名誉を伴ってカネを貰う方法は決まっているのだ、というわけだ(笑)
さよう、国際法に則って、粛々と宣戦布告すれば、勝てば賠償金であり、負ければ米国の負担で再建というわけである(ひー)


なんというか、もう、たまりません。
一読して損はないと断言しておきます。

ただ、こういうのは「おとぎ話」だから良いのでして。
言うまでもありませんが、独裁者が餓死者を出しながら核開発をするというのは、醜悪を通り越して悪行としか思えませんな。
そろそろ天罰が当たりそうなもんですが、意外にしぶとい。
やっこさんも、ゼニがなけりゃあ身動きもつかないでしょうから、そのうち音を上げてくるんじゃないか、と思っっちゃいるんですがね。
普通に考えりゃ、そろそろ手打ちする時期なんですがねえ。
どうも、意固地になる連中というのは、始末に負えないもんですなあ。