Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ペナンブラ氏の24時間書店

「ペナンブラ氏の24時間書店」ロビン・スローン。

主人公はサンフランシスコに住む若者でクレイ。元グーグラーが開業したクールなベーグル屋の店員をしていたが、ベーグルはさっぱりでクレイは職を失う。
なんとか当座をしのがねばならない、というので、たまたま見つけた募集中の張り紙をみたのが風変わりな「ペナンブラの24時間書店」だった。
この本屋は、ペナンブラ氏とクレイと、そしてもう一人の店員によって3交代の8時間勤務で24時間開業している。
クレイは夜の部の担当である。
顧客はごく少ない。夜だからそうなのかと考えたが、実はつねに客は少ないのである。
一般の客に好まれそうな本は(クレイの好きなSFも)書店の前のほうの棚にわずかばかりあるだけ。
そして、店の奥の書棚には、さっぱり今まで見たことも聞いたこともないような本がならんでいる。
書店の天井の高さは並のビルの3階に匹敵し、上部が見渡せないほどで、クレイは客の要望に基づき、梯子をかけて上り本を取ってくるのである。
店主のペナンブラは、売り物である本の中身を決してみてはいけない、という。
だが、好奇心旺盛なクレイはさっそく本を開いてみる。と、そこには、なんとも奇妙なアルファベットが並んでいた。
つまり、本はすべて暗号で書かれていたのだ!
クレイは、本の中身を見てしまったことをペナンブラに白状するが、ペナンブラはそれを当然という顔をして聞き流す。
そうでなくてはならん、などと言うのである。
クレイは、多少のプログラミングが出来るので、書店の日誌に基づいて、奥の奇妙な暗合本を借りにきた客の記録に基づいて、書棚を可視化する3Dモデルをつくる。
すると、驚くべきことに、それは人物の顔になった!
ペナンブラは「もう解いたのか?」と衝撃を受け、さらにその解読手法=コンピュータの活用にも大いに感銘を受けた様子だった。
ペナンブラは古参のコンピュータオタクであったのだ。彼はすごい勢いで最新のコンピュータ知識をアップデートしてしまう。
そこに、さらにグーグラー(グーグルの社員、つまりめちゃくちゃIQが高い)の若き少女、キャットが加わる。
彼女は、暗号をグーグルの力を利用して解いてしまおうというのである。
一行は、ニューヨークに向かう。
実は、ペナンブラの24時間書店は、500年前のある人物が残した暗号書物を解読する秘密結社の支部だったのだ。
その書物には、不死の秘密が書かれていると伝わっている。
ニューヨークの本部で、一行は、その解読すべき書物に遭遇するものの、結社のボスからはコンピュータを利用する解読を拒否されてしまう。
彼は暗号本が書かれた500年前の方法に従うべきで、コンピュータを利用するのは邪道だと考えているようだった。
途方にくれた一行だが、クレイは、幼なじみのニール(ベンチャービジネスが成功して大儲けしている)の支援を受けて、こっそり書物を丸ごとスキャンすることに成功する。
さて、現代の全能の神、グーグルが総力をあげて解読に挑むのだが、なんと結果は「無意味な文字の羅列」というものだった。
一行は落胆しペナンブラも行方不明になるのだが、クレイは、ある見落としていた点に気がつく。。。


現代のファンタジーであろうか。
今の世の中で「魔法使い」がグーグルだ、というのも面白い。
たしかに、グーグルで出来ないことは、誰がやっても出来ないのである。知能というだけではなく、資金力でもそうである。
まあ、たしかにそうかもしれないなあ(苦笑)。

この本の作者は相当な本好きと見えて、ちょこちょこと出てくるSF本のセレクトもなかなか良いのである。
アシモフハインラインでないところがいい。といっても、分かってもらえないだろうけど(笑)

本が好き、本屋が好き、でオタク。この3つが揃っている人ならば、間違いなく☆☆☆の名作。
しかし、そうでない人にとっては、ナニガナニヤラ、かもしれない。
そういう意味では、この本自体が、一種の秘密結社向け暗号本なのかもしれません。
人間というのは、お互い同士だけで通じる会話を楽しむ性質があって、いわゆる「同好の士」などというのは全てそうだと思うのですな。
意地悪な言い方をすれば「他人を排除する快感」というのがあるのかもしれませんねえ。
人間というのも、そう考えると、なかなか業の深い生き物ですなあ。