長い付き合いの知人と、久しぶりに一杯やろうという話になり、赤坂の砂場にいく。
気の置けない友人と酒を飲むなら蕎麦屋が一番である。
仕事は適当に切り上げて、5時には集合してしまう。今の時期は、お互いにそんな多忙ではない。
こんな時間に酒を飲み始めるのは、おじさんの特権かもしれんな。
かまぼこわさび(板わさ、ですな)とか卵焼き、焼き鳥(塩がうまい)などを頼みつつ、最初はビール。
キリンの大瓶である。生ビールなぞというものはない。コップについでビールを飲む。
残暑が吹っ飛ぶような気がして、ほっとする。
近況だの業界の噂話だの、とりとめもない会話をしながら、日本酒へ。
ここは、キクマサしかない。メニューには「お酒」しかないのだ。
選べるのは、冷やか、燗。
夏なので冷やで頼む。
ただしい「冷や」というのは、つまり常温である。冷蔵庫で冷やすような野暮はやらないのだ。
で、この変哲もない常温のキクマサがうまいこと。
冷やを飲むためのガラス製の猪口の縁が薄い。だから、キレが良い。それで涼しく感じさせる、というわけなのである。
思わず「これでいいじゃないか」と唸った。
日本酒も色々な銘柄があって、それぞれ旨いのだが、キクマサでいいじゃないか。別に、あれこれいらんのではないか、というわけである(笑)。
ひとしきり呑んで、最後に天ざるで締めて、店の外に出た。
なんと、まだ6時半だった。
「あと一杯だけ」と言いながら、赤坂の町にさまよい出る。
幸福な夏の終わりの夕暮れ。