Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

消費税が社会保障を破壊する

「消費税が社会保障を破壊する」伊藤周平。

さきの参院選挙では「れいわ新撰組」が大きく票を伸ばし、比例区で2議席を獲得して話題になった。
山本代表の主張のネタになったのでは?と思える本である。

まずタイトルの意味から言えば、いわゆる「消費税を社会保障目的税とする」ことに著者は反対なのである。
過去のデータからいえば、消費税の上昇分がそのまま社会保障費の上昇に充てられていたわけではない。そのほとんどは、内訳で計算すると法人税および所得税の減税に使われた計算になる。
社会保障に投入されたのは、わずか5000億円である。
著者は、どうせ政府のサイフは1つなのであって、社会保障が必要ならば一般財源から歳出をすれば良いだけだと指摘している。
消費税が上がったぶんが法人税減税に使われているのでは、消費税以外の税収が単に社会保障に投入されなくなっただけで意味がない、ということである。
そして「社会保障=消費税」という図式がアピールされればされるほど、その他税収からの社会保障への歳出が減らされるのであるから、それは社会保障の破壊である、というのである。
たしかに、法人税が減税された結果が内部留保になっている現状をみれば、著者の指摘は当たっているようにも思える。

ただ、この法人税減税についていえば、過去の経緯を思い出す必要があると思う。
それは、バブル崩壊後の常軌を逸した「貸しはがし」であった。当時の私の勤務先も、大変な目にあった。毎年借りていた(もちろん返済している)季節資金(つまりボーナス資金)を貸さないわけだ。
突然である。
あのときの経営者は、みんな同じことを思ったに違いないのだ。
「銀行をアテにしていては、会社はつぶれてしまう。自己資金しか信用できるものはないぞ」と。
かくして、法人税減税の要請が始まったのではないか。
今は超低金利で、銀行は貸出先もないのだが、法人がみんな資金需要がないとは思わない。ただ、うっかり借りるとどうなるか?みんな、忘れてはいない。
世話になった店長がある日突然異動して、新任の店長が開口一番「私の仕事は回収です」と言うのだ。
税金なんか払ってられるか。

世の中、原因があって結果があるのである。
銀行にカネがじゃぶじゃぶ余っていても、誰も借りない。
ああ、日本人はリスクを取らない、これじゃあダメだと嘆くお偉い評論家さん達よ。
あんたらは、都合良く忘れて居るんだろうが、こちとらそうはいかんぞ。そう思っている経営者は多いと思う。


その他、社会保障が年々削減されている有様など、まさに本書のいう通り。
しかし、カネがなけりゃあ、そうなるのだ。
代わりに防衛費が伸びていると指摘するが、それなら中共に言えば良い。尖閣に押し寄せるのをやめろと言えば良いのだ。
自国の領土にヅカヅカ踏み込まれて、のほほんとしている国家がどこにあるのだ。当たり前ではないか。
少なくとも、私はこの国が中共に支配されるような話はご免である。あやつらは、人権もくそもない連中ではないか。


というわけで、評価は☆。
本書の指摘はわかる。
されど、全面的にそうだ、そうだとは思わん。
なぜなら、先立つものがないのであり、それはそれなりに理由があるのである。
社会保障にはカネがいる。しかし、防衛費も増やすな、減税もするな、金持ちにはもっと税をかけろという話では難しいと思う。
会社も企業も外国には逃げないかもしれないが、カネは簡単に逃げる。
1兆円儲かっていても、ソフトバンクは税金を払わないが、そんなのは氷山の一角である。
もっと厳しくすれば、それなりの対策を(カネをかけてもおつりがくるから)するし、それでもダメなら本社を海外移転する。
日本で大きく儲けていれば、それは別である。ソフトバンクも、通信キャリア会社は国内法人で税金を払っている。
ただ、海外で儲ける分はもっと大きいし、そっちで税金を払うつもりはないだろう。日本人相手に商売したわけではないのだから、彼らはそう考えているだろう。
もう少し多面的に考えないと、この問題は解決しないように思う。
少なくとも、国家主権が大国でも小国でも平等である限り(権利は人間が考えた架空の存在であるので、いくらでも平等にできる)勝手に他国の主権に物言うわけにはいかない。
グローバリズムというが、すべて人間が作った世界に由来する。
別に、ロスチャイルドが世界をすべて把握しているわけではないのだ。ロスチャイルド卿が、日本の年金について細々支持をだすわけもなく。

世の中は、もう少しフクザツで辛辣にできている、と思うのですがねえ。