Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

衆愚の時代

「衆愚の時代」楡周平

 

かつての民主党政権時代に、著者が1年以上かかって、世間の指弾を浴びることを覚悟で書き下ろした本である。
その内容はどうか?
まず、冒頭から「派遣切りは正しい」と言う。
そもそも、なにゆえ派遣労働者なるものが必要とされたのか?そりゃ、会社がやばくなったとき、正社員のクビを易易と切れないからに決まっているからではないか。
もしも派遣社員全員を正規雇用にしたら、閑散期も繁忙期と同じ人員を雇わなければならなくなる。
そんなことをしたら会社は潰れてしまうし、潰さないようにするには商品価格を上げるしかない。
つまるところ、派遣社員を生んだのは、一円でも安い商品を買い求める消費者に他ならんではないか。
派遣切りに文句を言うのであれば、まず商店にいって、高い品物から買い求めるべきだ云々。

 

その他、若者が暴力犯罪に走るのはメディアがそんな連中を持ち上げたせいだとか、サラリーマンは気楽な稼業のわけがないだろとか、思い切った割には小市民的な主張(笑)が続く。
amazonの書評を見たら「オヤジの愚痴の域を出ない」というこっぴどいコメントがあった。不謹慎だが笑ってしまった。そのとおりだから、である。

 

そんなわけで、居酒屋で聞けるオヤジの愚痴にカネを払う必要もあるまいと思われるので、評価は無☆とする。
こればかりは、いたし方あるまい。

 

で、本書を読みながら思ったのだが、米大統領選のトランプ旋風のときに言われた「ポリコレ」である。
ポリティカル・コレクトネスというのだそうが、つまりは政治的に正しい(!)言説、というわけである。
日本語で近いのは「キレイ事」だと思うな。
テレビやその他のマスコミに出る有名人は、ポリティカル・コレクトネスしか言っちゃあいけないわけである。
少しでもはずれたら「失言」なので、袋叩き。
で、トランプが「うるせえ!俺がホントのことを言ってやる」と息巻いて当選した。
たぶん、その前のオバマが演説だけはうまく、まるで実行力がなくて世界を混沌とさせたので、その反動があったんだろうと思う。
今回の米大統領選ではどうなるかと思っていたら、貧乏人を助けろというサンダースじいさんが出てきて面白くなったと思っていたら、予想どおりメディアのポリコレ旋風にあって、オバマと同じ路線のバイデンが出てきた。
なので、たぶん、バイデンが民主党候補になって、またトランプにやられるんだろうな、と思う。
つまんねえ選挙だわな。(笑)

 

まあ、世の中、何でも本音をぶちかませば良いというもんではない。キレイ事とかタテマエとか、たいへん大事である。
しかし、それ以外の発言は許されぬ、となると、えらく住みづらいような気がする。
私としては、キレイ事も本音も、タテマエも差別発言も、なんでもかんでも言いたい放題の言いっぱなし、という世の中のほうがよろしいような気がしている。