Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

医学部の大罪

「医学部の大罪」和田秀樹

ご存知の高名な精神科医の書いた本である。
有名な山崎豊子の「白い巨塔」は医学部の医局制度の弊害を活写した名著だが、あれからずいぶん経つのに、医学会の状況はさして変わりがない、という告発の書である。

まあ、医局制度自体は、研修制度が変更になったので、以前ほどの威光はなくなった。
とはいえ、実際に大学に残って研究の道を進もうと思えば、将軍様か教授様かという医局制度にどっぷりとはまらなければならないことに変わりはないらしい。
そして、その大学教授が必ずしも臨床が得意であるとは限らず、診断もできず手術もできず、という教授は珍しくもない。
あのIPS細胞で有名な山中教授もそうで、臨床で全然ダメで落ちこぼれ扱いされて追い出されたのが功を奏して、研究に邁進できたのである。
もっとも、最近では「コネクティングルーム」の厚生省高官に研究費を打ち切るぞ、と脅されているらしい。ふざけんな。

もちろん、その教授が製薬会社と昵懇なのは周知の通りで、アゴアシ接待は言うにおよばず、愛人を囲うためのマンションの提供をしている会社もあったそうだ。
製薬会社は企業なので、儲からないことはしないわけで、教授をここまで大事にするのは相応の見返りがあるからである。そうでなければ株主がゆるさんからなあ。

メタボの問題も、最近ようやく「やや太りぎみ」くらいの人のほうが長生きする、というデータが知れ渡るようになった。
欧米では心臓疾患、日本ではガンによる死亡が多い。
メタボを警戒するのは心臓疾患で、ガンの人は痩せ型に多いので、ガン死が多い日本人ではやや太り気味のほうが平均が上がることは充分に予想できるのであるが、そういう研究は相手にされない。
既得権益を握っている教授の意向に逆らう研究をしたらダメである。
臨床の世界も同様で、慶応大学の近藤医師の「ガン放置療法」(もっとも放置したら療法ではない気がするが)も同じである。
タチの悪いガンは一定確率で当たるので、そういうやつは切ってもダメでかえって寿命を縮めるから切らないほうが良い、というだけの話なのだが、外科の強い大学で「切らない」なんて話をしたらエリート医師でもお先まっくらになるのだ。

まあ、そういう医学の世界の問題点が内部告発の迫力で書かれている。
和田氏も、すでにどこの大学にも遠慮しなくて良くなっているので(笑)このさい書いちゃえ、で書きまくったと見える。
なかなかに、すさまじい。評価は☆。


世間では、新型コロナで大騒ぎであるが、我が国の流行は、まだパンデミックというほどではないようだ。
政府の一斉休校とかリモートワーク推進とか、どこまで効果があったのか、正直わからないが、やらなかったらもっと広がった可能性もある。
支那では収束しつつある、といっているが、中共のいうことだから、どこまでホントかは不明である。
欧米はいよいよひどいことになりつつある。
とみると、日本の医療は優秀だ、と言いたくなるのだが、おそらく日本人が清潔好きであることや、日頃から他人との接触が多いとはいえない文化を持っていることもあるから、一概には言えないだろう。

ひとつ言えるのは、経済的には大打撃だ、ということである。
そこで思ったのだが、今の日本では製造業はかつての勢いがなく落日の趣であるし、金融も欧米には歯がたたない。
IT、ソフトウェアも言うに及ばず。
では、何が今後、日本のなかで伸びるだろうか?と考えたのである。
ある産業が伸びるためには、まず人材だろう。
アメリカなら、たとえばMITやスタンフォード大を卒業した優秀なやつが行きたがるのは、まずGAFAだろう。特にグーグルは大人気のようで、相当狭き門だそうだ。
優秀な人材が行くので、GAFAは強い。納得である。
では、日本で最優秀な東大生はどこに行くか。
東大の中でも最難関は理三であって、これは医学部である。
それどころか、慶応だって医学部が一番難関だ。国立なら、どこでも医学部が一番難しい。
つまり、日本の最優秀な人材は医学に進んでいる。
であれば、日本の医学は世界に冠たる優秀さを発揮しなければおかしいのである。
では、実際にどうだろうか?
山中教授のようなIPSは例外ではないだろうか。これからの日本は医学だ、という主張をあまり耳にしない。
もっとも優秀な学生を集めて、これはおかしな話ではないかと思う。

アメリカはIT業界のGAFAに優秀な人材を集める。それが国を発展させる成長産業だから、である。
日本は医学に優秀な人材を集めてていいのかなあ、と思った次第。
2流3流の人材の寄せ集めで、世界と戦えというのも酷なので、そりゃ仕方がないとは思うんですがね。