Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

モリーズ・ゲーム

モリーズ・ゲームモリー・ブルーム。

 

著者のモリーアメリカ人女性で、ちょっとした有名人だった。
というのも、とんでもない有名人を集めてポーカー・ゲームを主催していた彼女は、まだ20代の若い女性だったから。
彼女が逮捕されて(逮捕容疑は別件だった。巨額詐欺事件の共犯およびそのマネーロンダリングの共犯)人々はバックに別の大物がいるのではないかと考えたのだが、なんと、本当に彼女自身が主催者だったのだ。
しかも、彼女には冬のオリンピックのスキー競技で、出場歴さえあった。オリンピアンだったのだ。
誰でも名前を知っているような大物(それもビル・ゲイツスティーブ・ジョブス、さらにはNYヤンキースのA・ロッドまで!)を集めてポーカーゲームを主催していたのが、どうして若い20代の女性なのか?
マスコミは騒ぎ立てた。
彼女は、そうしたマスコミに大して沈黙を守っていたが、判決が下る前に、告白本を出版した。それが本書で、2017年である。

 

彼女は、もともと3人兄弟の真ん中の唯一の女の子として育った。
兄は優秀な成績を収め、医者として大成功をした。父親の自慢の息子だ。
そして、弟はさらにすごく、米国のスキーモーグル選手としてメダルを取る一方、恵まれた容姿を生かしてファッションモデルにさえなった。現役を引退するとITベンチャーを起業し、これも大成功を収めてさらに有名になった。
モリーはこの兄弟に対して、たいへんコンプレックスを持っていた。もちろん、彼女自身も弟に負けじと努力して、米国オリンピックスキーチームの選手になるくらい、優秀なのだ。
しかし、この兄弟には見劣りする、と考えていた。

そこで、モリーはコンプレックスを忘れるため、コロラドの実家から独立しようと考えた。往く先は大都会ロサンゼルスだ。
どうなるか分からないが、独力でやってみよう、と彼女は考えたのである。
そこで、彼女はウェイトレスの仕事にありつく。
そのレストランのオーナーは、尊大で自己中心のカタマリのような人物だったが、めちゃくちゃ仕事は出来た。
モリーは、いつしかウェイトレスではなくて、オーナーの秘書として働くことになる。
このオーナーの人使いはめちゃくちゃで、秘書は今まで3ヶ月続いた人がいない。
ところが、モリーは素晴らしい優秀性を発揮して、このオーナーの期待にこたえる。
そして、このオーナーのサイドビジネスが、有名人を集めてポーカーゲームを行うことだった。
連邦法でも、もちろん賭博開帳罪はある。
ところが、このオーナーの考えたのは法の隙間をつくグレーなビジネスだった。つまり、ポーカーゲームを胴元としてテラ銭(レーキという)を取れば、犯罪になる。
そこで、テラ銭を敢えて取らず、単にゲームの手配を行ってチップの計算や精算を行うことで、参加者からチップを貰うことにしたのだ。
チップであるから、何%などというルールはない。何%かを決めれば、それは手数料になってしまう。
あくまで参加者の「心づけ」にしたのだ。
そうすると、法的には賭博場を開帳したという根拠が無い。もちろん、賭博が行われているのだが、それは参加者同士が個人的にやっていることであって、賭博場を誰かが開帳したとは言えない、というわけである。
このグレーゾーンによるポーカーゲームは、莫大な収入を生んだ。
しかし、モリーとオーナーはある日、対立することになる。オーナーはモリーをポーカーゲームから追い出し、ただの雑用秘書に戻れという。
モリーは、親しくなっていたゲーム参加者に相談し、自分でゲームを主催する、という独立宣言を出す。
この話を聞いたオーナーは、怒ると思いきや「これで、お前も卒業だな」と笑う。モリーが独立するに足る実力を身につけた、というオーナーなりの卒業試験だった。
こうして、モリーは、20代の若さで名だたるVIPを集めてポーカーゲームを主催することになる。
恐ろしいほどのカネが集まった。
そのカネ目当てに、人間の欲望が錯綜する。
LAでのビジネスが困難になったモリーは、いっそもっと大きな世界と考えて、ニューヨークでゲームを立ち上げる。
それは、さらに巨大な成功と栄華、そして転落への始まりであったのだった。。。


どうしてモリーがこんな立場になったのか?
本人の類まれな才能と努力、そしてとんでもない偶然が、彼女をポーカーの世界の女王へと押し上げていく。
なにより、これが本人による実話だという点がすごい。
本人でなくては書き得ない迫力である。
評価は☆☆。

こんな面白い本なので、当然、映画化されたようだ。
いつものとおり、私は映画は見ていない。
この本を読んで、さらに映画を見たいとは思わない。
だって、たいがいの本が、原作を読んで感動したあとで、映画を見るとがっかりするからだ。
せっかくの面白い作品を、くだらない2時間の我慢で色あせさせることはないと思うのである。

 

犯罪の告白、というものは面白いものだ。
しかし、今は、これ以上は書かない。

 

ちなみに、モリーの判決は執行猶予1年という寛大なものだった。

巨額詐欺事件について、彼女の関与度合いは薄いものだったからである。

今では、故郷のコロラドで、普通の穏やかな暮らしに戻っているらしい。