Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ユナイテッド・ステーツ・オブ・ジャパン

ユナイテッド・ステーツ・オブ・ジャパン」ピーター・トライアス

 

この本は、数年前に、学生時代の先輩から「面白いよ」と言われていたもの。
ハヤカワSFも、入手するのが困難になってきて(amazonで追っかけるほどじゃない)すっかり忘れていたのを古書店で発見。
こりゃ読むしかないと購入。

舞台はパラレルワールドの世界で、第二次大戦で枢軸側が勝った世界。
米大陸の西海岸を大日本帝国東海岸ナチス・ドイツが占領して冷戦をやっている。終戦間際に、日本はナチス・ドイツに対する示威行動としてサンノゼに核を使用した。
一部のアメリカ人は廃墟のあとに自治区のようなものを作り、米国独立のためにゲリラ闘争を行っている。
主人公の石村大尉は、39歳になって同期が全員昇進したというのに、いまだに万年大尉のままである。本人も理由はわからないものの、なかば諦めている。
その石村大尉へ、発信者不明の携帯電話がかかってくる。その声は六浦賀将軍である。聞けば、娘のクレアが死んだ、という。
石村大尉はかつて六浦賀将軍の部下であり、その娘のクレアとも仲が良かった。
ちなみに、この世界での携帯電話はスマホがさらに激しく進化した万能端末になっており、電卓という名前で呼ばれている。
石村が。この電話について考えていると、特高警察のやたら強気な女性隊員の槻野がやってきて、六浦賀の居場所を教えろという。
浦賀は行方不明になっていたのである。
どうやら、ご禁制の電卓ゲームを開発したのがバレて、逃亡中らしい。
そのご禁制の電卓ゲーム「USA」は、平行世界で「米国が枢軸側に勝利した」世界が描かれているのだという。
石村は槻野とともに、六浦賀を探すことになる。
その行動中、槻野は無慈悲にスパイ関係者と疑わしき人物を射殺する。特高に睨まれたら、拷問を受けて死ぬか、罪を認めて死ぬか、いずれかしかないのだ。
ところが、殺したスパイの復習のため、槻野自身がアメリカ人抵抗組織に捉えられ、両腕を人食いアリに食われて失ってしまう。
さらに、生還した槻野を「生きて帰れたのが怪しい」として、彼女の組織である特高から疑われることになる。
槻野は急造した義手とアームガンをつけた姿で、石村とともに、六浦賀を見つけて連れ帰ることで自らの疑いを晴らそうとする。
巨大メカに乗ってアメリカ人抵抗組織の内部に潜入した二人は、なんとか六浦賀を発見して、その首級を手に入れたものの、脱出が極めて困難に。。。


枢軸側が勝ったパラレルワールドものといえばP・Kディックの名作「高い城の男」がある。これは、まじに名作である。SF史上に燦然と輝く大傑作である。「これが頂点
という人がいても、ぜんぜんおかしくないどころか、賛同者は多いと思う。
枢軸側が勝たないまでも、日本が降伏せずに抵抗を続けている世界では「五分後の世界村上龍という、これまた名作がある。
で、本作がこれらに比肩する、あるいは凌駕する名作か?
残念ながら、私の判定はノーである。
評価は☆。

たしかに面白い。けど、ディックと比べちゃだめ。

 

日本文化オタクの著者らしいガジェットがあちこちにあり、舞台設定の想像力もなかなかすごいのだ。
だけど、読みながら、何かがもう一つ足りないと思わざるを得なかった。
一言でいえば、これは「映画のシナリオ」のよう、なのだ。
それゆえに、小説としてみたときに、小説を小説たらしめている決定的な要素に欠けている。
これを映画化すれば面白いだろうし、あるいは小説よりも映画のほうが面白いかもしれない。
そこが、本書の限界のように、自分には思われる。

一番おもしろいのは、本当は読んでいる読者のアタマの中のほうなのだと思うのである。