Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

協定

「協定」ミシェル・リッチモンド

セラピストのジェイクと弁護士のアリスは幸せな結婚式を行う。
その結婚式に、音楽業界の大物がやってくる。彼は、アリスの弁護士の業務で多大な利益を得た。
その打ち上げの席で、アリスが冗談に「よかったら、結婚式にどうぞ」と言ったところ、なんと「喜んで、出席するよ」と返事が。
かくて、誰もが知る大物音楽プロデューサーも臨席する式となった。
そのとき、大物はこう聞く。「君たちは、この結婚を永続させたいと思っているかい?そのための努力はいとわない?」
二人は「もちろん」だと答える。
すると、大物は「では、プレゼントをあげよう。きっと喜んでもらえるだろう」という。
一週間後に、二人のもとに立派な木箱が届く。そこには「協定」と書いてあった。
二人のもとに、女性が訪ねてきて、協定の契約書を渡して「これを読んで、サインをしてほしい」という。
ジェイクはろくに中身を見なかったが、アリスは弁護士という職業柄、すべて目を通して「これは悪くない」という。
二人はサインする。

やがて新婚生活が始まるが、弁護士のアリスは仕事に熱中し、帰宅もおそくなる日々が続く。
すると、突然、男が現れて、「協定」によってアリスを拘束するという。
ジェイクは驚くが、男は「初犯なので、そう大したことはないだろう」といい、アリスは「協定」の規定どおりにすると答える。
そして、アリスは「協定」の刑務所に連れて行かれる。数日で彼女は戻ってくるが、彼女の首には「集中装置」という首輪がついていた。
以来、彼女は帰宅を早めて、結婚生活を尊重するようになる。
ジェイクは嬉しさを感じる反面、こんなやり方に違和感を感じる。
そこに「協定」メンバーのパーティがあり、ジェイクは学生時代に付き合っていた女性と偶然に再会する。
彼女は「ここで目立ってはいけない。大変なことになる」とジェイクに警告する。
後日、こっそりと(妻にも秘密で)彼女に会ったジェイクは、「協定」はカルトまがいの大変危険な組織だという話を聞く。
驚いたジェイクは、「協定」を脱退する方法を探り始めるのだが、それはなぜか「協定」の知るところとなって、ある日、ジェイクを迎えに男が現れる。
刑務所に連行されたジェイクは、「協定」に背いた人が恐ろしい拷問を受ける光景を目撃する。
大変な目に合わされたジェイクは、帰宅後、アリスとともに「協定」を脱する方法を模索しはじめるのだが。。。


たいへん面白い。
評価は☆☆。
秘密組織である「協定」が、いかにもありそうな(陰謀論好みの)雰囲気で描かれており、ジェイクのおどろきと焦りがわかる。
それが、いつしか妻との誤解を生むあたりも、たいへん絶妙な描写だと思う。
人は、「良かれ」と思って行動した結果が、思わしくないほうに転がってしまうケースがまま起きる。そして、その回復も容易ではない。
作者は、その容易ではない道が、つまりは「結婚」なのだと考えているようだ。

日本でも、昨今では結婚したカップルの三分の一は離婚に至る。
昔とちがって、今は結婚に至るまで、まったく相手のことを知らないまま結婚しました、などというケースは希少だろう。(昔はお見合いとか、親が決めたとか、ぶっつけ本番?な結婚もままあったようだ)
それなりの交際期間を経て結婚しているのに、それでも高確率で離婚してしまう。
何かが「違った」ということなのだろうし、事情はそれぞれであろう。
単に、今の人は我慢しなくなった(双方とも)ということかもしれない。

おそらく、今の人は「合理的」だから、なのだろうと思う。
結婚を「損か得か」(もちろん、金銭だけではなくて)で判断する。「こんなのは自分の人生の損だ」と思えば離婚する。
私の考えでは、そもそも結婚制度自体が合理的ではないので、合理的になった現代人に合わなくなったのであろうと思う。

あと100年後に、結婚制度が存続しているだろうか?
そのとき、すでに私はこの世にいないわけなので、正解を知ることはできませんが、たぶん無くなっているほうにかける。
なぜか?
おそらく、百年後の人は、今の人よりもさらに合理的に物事を考えているだろうから、ですね。

 

〈協定〉〔上〕 (ハヤカワ文庫NV)
 

 

 

〈協定〉〔下〕 (ハヤカワ文庫NV)