Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

そしてミランダを殺す

「そしてミランダを殺す」ピーター・スワンソン。

英国ヒースロー空港で、テッドとリリーは同じ便の待ち合わせとなり、バーで互いの身の上を話す。
テッドは、妻ミランダの浮気を目撃したことを打ち明ける。妻は、新築の家の工事請負業者のブラッドと浮気をしているのだ。
リリーは「どうしたい?」とテッドに聞く。
テッドは「殺してやりたい」と答える。もちろん、最初は冗談半分だった。
しかし、リリーはそれを聞いて「それはもっともだ」といい、もしも実行するつもりなら、米国についてからもう一度会おう、と提案する。
テッドは、妻に対する怒りを押さえきれず、約束通りリリーと会う。
リリーは、テッドに殺人計画を伝える。妻ミランダを殺しても、テッドが捕まってはいけない。リリーはテッドにアリバイを提供することになった。
テッドは、殺意をもってミランダのもとに向かう。
ところが、そこにはブラッドがいた。ブラッドは、ミランダに「テッドを殺して二人で逃げよう」と持ちかけられていたのだ。
ブラッドは、すっかりその気になり、テッドを殺してしまう。
新聞で事件を知ったリリーは、すぐに真相に気がつく。
リリーはブラッドに会って「あなたはミランダに利用されているのだ」という。
ミランダは、警察の捜査に対しても「何も知らない」といえばよい。テッドを殺したのはブラッドなので、ミランダの証拠はでない。
ブラッドはミランダに騙されたと警察に主張するだろうが、その証拠はなにもない。こうして、ブラッドを見捨てたミランダは、テッドの莫大な遺産を一人で相続するわけだ。。。
ブラッドは怒り、ミランダを殺してやるという。
リリーがブラッドと別れた直後、ミランダがやってくる。
すると、ブラッドはいまのやりとりを、すべてミランダに報告してしまう。
ミランダは言う。「OK、じゃあ、リリーを罠にかけてやりましょう」
翌日、リリーとミランダは直接会って対決する。
二人は、実は高校の同級生だったのだ。
そこにブラッドがやってきて、スパナを振り上げる。
彼が打ちのめしたのは、ミランダだった。
ブラッドがミランダにした打ち明け話は、すべてリリーが事前に指示したことだったのだ。
リリーは、ブラッドに逃走する準備をしようといい、酒を飲ませて泥酔する間にブラッドを絞殺する。
警察は、ブラッドはテッド殺しの犯人であり、ついでミランダを殺して逃走中と思うはずだ。
そのブラッドを殺して死体を隠してしまえば、リリーのことが捜査線上に浮かぶことはない。
リリーは死体をトラックにのせたまま、故郷へと向かう。
そこには彼女が思春期におかした殺人の死体を隠した井戸があるのだ。

一方、刑事エリックはリリーがテッドと同じ便に乗り合わせたことについて、小さな嘘をついたことがどうしても気になり、独自にリリーを捜査し続けていた。
古い墓地でエリックとリリーが対決、するとナイフでリリーはエリックを刺した。
「ごめんなさい」
直後、リリーは逮捕。幸い、エリックの怪我は大事に至らず。
むしろ、エリックの捜査が私的なものだったので、リリーの「ストーカーだと思った」という言い訳が通る状況に。
留置場のリリーは、保釈が決定的だった。
そこに、父親からの手紙がくる。。。


いやあ、面白いのなんのって。
これこれ、これですよ(笑)
欧米作家のストーリーテリングのうまさは、本当に凄いねえ。日本の作家のリーダビリティって、単にスカスカな内容を水増しして、、、という手合も多いのだが、あちらさんは違うのだ。
オハナシが面白いので、なかなかページをめくる手が止まらなくなる。
評価は☆☆。
読んで損なし、推薦の一冊ですね。

本書は登場人物の視点で語られる倒叙モノなのだが、つまり犯罪者心理を描き出すあたりも凄いわけだ。
どこが凄いって、子供の頃からリリーは犯罪、殺人に対しての嫌悪感とか罪悪感がまったくないのだ。いわゆるサイコパスである。
こういう人達って、基本的に殺人をしても「悪いことをした」とは思わないわけで、実際に更生するのが困難な理由もわかろうというものだ。
「ちょっとした出来心」とか「まずいとは思いながら、ついつい」なんてレベルじゃない。
憎悪でもない。自分は正しいことをしている、という確信で殺人をしてしまう。
生まれる時代が間違ったというべきなんでしょうなあ。
戦争中なら、英雄になれたかもしれない。
世に合わない、というのは、それだけで罪なのかもしれません。
分野は違っても、そういう話はあるんじゃないですかねえ。