Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

コードネーム・ヴェリティ

「コードネーム・ヴェリティ」エリザベス・ウェイン。

ヤングアダルト向け小説として出版され、各種の賞を総なめにしたという傑作。
本邦では、あまり話題にならなかった?

小説は第1部と第2部に分かれていて、それぞれ別の人物による手記のかたちをとっている。
第1部を書いたのはクイーニー(コードネーム ヴェリティ)。彼女は、バイク屋の娘で飛行機に乗るマディという少女と出会う。
二人は意気投合し、親友になるのだ。
やがて、戦争が始まり、二人はそれぞれの道を歩む。クイーニーは特殊部隊へ。マディは婦人補助空軍へ。
マディは飛行機の操縦に熟達しているが、女性は戦時下ではパイロットになれない。なので、いつも下手くそな男性パイロットのナビゲータをするはめになる。
ほんとうは、マディが操縦したほうが早いのだ。
ある夜、当直のパイロットがアクシデントで来られなくなり、代わりに、ほんとうはいけないのだが、マディが飛ぶことになった。
ナチス支配下のフランスに、特殊部隊の人員を運ぶという危険な役目で、飛行は夜、行われる。
その特殊部隊の人員はクイーニーだったのだ。
マディの卓抜な操縦技術で二人はフランスに飛ぶものの、ナチスの対空砲火に捕まる。
傷ついた飛行機をマディは必死で着陸地点に運ぶが、すでに着陸は不可能な状態だった。
マディは、自分の危険を顧みず、クイーニーがパラシュート降下できるように上昇する。
クイーニーは無事に降下するが、翌日、通りをわたる不審な姿を見咎められ、ナチスに捕まってしまうのだ。
スパイには交戦規定は適用されない。クイーニーは捕虜としての待遇すら受けることはできない。
彼女は連日の拷問に苦しみ、紙と2週間の時間を与えられる。
クイーニーがここに来るまで、すべて知りえたことを手記を形で筆記するのだ。
書いている間、彼女は収容所に送られないが、書き終えたら、彼女はそのまま「夜と霧」に消える。
ナチスの実験に使われたあげく、処刑されてしまうのである。
手記は「私は真実をかいた 私は真実をかいた」と連記されておわる。書き終えたら、彼女の運命は終る。

第2部は、マディの手記だ。
マディは、クイーニーを降下させたあと、死を覚悟して着陸を行い、飛行機を大破したものの奇跡的に助かる。
現地のレジスタンスに助けられ、農家の納屋に潜んだものの、マディの安否はわからない。
幾度か飛行機によって脱出を試みるが、迎えの飛行機が着陸できなかったり、あるいはマディが時刻までに離陸場所にたどり着けなかったりして(マディはラジエータを治せるのに、フランス人の運転手は女に触らせないというので自動車が遅れたのだ)脱出もうまくいかない。
そのうち、ナチスにクイーニーが捕まっているという情報が入る。
捕虜を収容している施設について、貴重な情報をクイーニーはすべて手記の形で書いていた。
第1部の手記は、実はクイーニーの命をかけた暗号文書だったのだ。
ある日、収容施設から捕虜が収容所に移送される情報をつかんだレジスタンスは、捕虜奪回を目指して移送車両を襲撃する。
このメンバーにはマディも加わる。
襲撃はうまくいくかに思われたが、ナチスは捕虜を移送車両から出して道路に並ばせ、一人の兵士がやられると二人の捕虜を射殺するという行為に出る。
レジスタンスは手が出せなくなってしまう。そのうち、ナチス側に応援の兵士が到着し、レジスタンスの奪回作戦は失敗におわる。
そのとき、捕虜のひとりが走って逃げようとする。
ナチスは、捕虜の股を撃ち、ついで両肘を撃ち抜く。そうして身動きできなくしたところで、車両に詰め込んだ。
次の捕虜も同じように、、、そして、3人めの捕虜がクイーニーだった。
クイーニーは、マディが来ているのを悟って叫ぶ。「キスしてくれ、ハーディ!」
これは、ネルソン提督の最後の言葉である。艦隊は勝ったが、ネルソン提督は被弾して死んだ。
マディは、言葉の意味を悟って、クイーニーを狙撃して射殺した。クイーニーが、恥辱を避ける唯一の方法だった。
捕虜の死体は見せしめに河原に野積みにされた。
しかし、クイーニーの情報をもとに、レジスタンスは捕虜収容施設の爆破に成功。ナチスは退去した。
クイーニーの死体は、伯母さんの庭に埋められた。
マディは生き残ったが、彼女の半身は、河原に埋められたままだ。。。


まごうかたなき傑作。
評価は☆☆☆。
第1部と第2部という小説的な仕掛けが完璧で、クイーニーとマディ二人の少女の友情が胸を打つ。
これが欧州のヤングアダルト向け小説だという事実に驚嘆するほかない。かの地の読書能力の高さよ。
日本で売れるのはラノベハリーポッターばかり。ハリー・ポッターが図書館で借りられないと文句をいう親がたくさん。
買いもしないのだ。
あとは、登場人物のセリフでカギカッコだらけの小説。
ちょっと重層したストーリーだと、すぐに「よくわからなかった」という「書評」!?があふれたりする。恥ずかしい。
日本の出版界はだめになっている。
だめにしているのは、はっきりいえば、読み手なのだ。
しっかりした小説を、やっぱりkindleで読むのは疲れると思う。紙が楽なんだ。
もちろん、kindleで間に合う場合もある、だから半々くらいでいいかもしれない。
でも、半々どころじゃない、紙の出版は全滅だ。しっかりした小説は売れない。読み手が低レベルだとはっきり思う。

私は、怒りを込めて、この国の読書について書いた。