Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

贖罪の街

「贖罪の街」マイクル・コナリー

 

土曜には一日中すごい雨だった。
日曜日は晴れたものの、とんでもない強風。とても自転車どころではない。
というわけで、緊急事態宣言下でもあるし、ステイホームを決め込む。
となれば、読書三昧、これにまさる楽しみはないわけで。
大好物のボッシュシリーズを読む。
昨年末には入手したいたものの、資格試験の関係でずっと積ん読だったのだ。

 

ボッシュシリーズでは、主人公のボッシュはしっかり年をとる。すでに65歳。
ロサンゼルス市警で定年延長制度のもと働いていたボッシュだが、前作の終わりでちょいと勇み足があった。捜査資料を読むのに、そのファイルがある部屋のカギが閉まっていたので、ちょいとヘアピンでアレしたわけだ(苦笑)。
で、警察をクビになり、ついでに退職金までフイになってしまった。
一人娘のマディがこれから大学なので、まだカネがかかる。蓄えはファンドで運用中なので、手をつけられない。
古いバイクのレストア三昧の生活を目論んでいたボッシュだったが、このような事情もあって、腹違いの兄弟の弁護士ハラーの調査員をやることになる。
ハラーの雇っていた調査員シスコは、冒頭で自動車に対向車線に押し出されて大怪我を負ったためだ。
ハラーの抱えている事件は、被告人フォスターの殺人疑惑を晴らすというもの。
ボッシュは、実際にフォスターと面会して、どうやらシロではないかという感触を得る。
ということは、真犯人がどこかにいるということになる。
元警官が、弁護士の調査員として働くことをロス市警では「川を渡る」という。おそらくルビコン川のことか。
つまり、もう帰れない、「敵」側にまわった、という意味になるのである。
ボッシュは、元同僚らに「裏切ったのではなく、本件に限って、真犯人を見つけるためだ」と弁解している。
元刑事、という曖昧な立場で独自の捜査を進めていくボッシュは、事件の現場で高級腕時計、オーディマ・ピケの空き箱だけがあったのが気になった。
中身はどうした?
時計の謎をおってボッシュはラスベガスまで走り、その時計が盗品としていったんは元の持ち主位に注意され、つづいて、元の持ち主が「盗まれたのではなく、売ったものだ」と届け出たことを知る。
ボッシュは、「この時計がすべての謎を知っているんだ」と理解する。
そのボッシュのもとに、二人組の風俗取締警官の手が迫る。。。


いやあ、さすがにボッシュシリーズ。
まったく期待を裏切らないなあ。今作も、行き着く暇もない面白さで上下2巻。
文句なしの評価☆☆。

 

ハードボイルド、というものを読みだしたのは学生時代だった。
二十代は大藪春彦を読んだ。
三十代になって、当時付き合っていた彼女に進められて、新宿鮫シリーズを読み出した。今でも、このシリーズを読むと、当時のことが蘇って、なんとも切ない気分になってしまう。私が悪かったのだ、すまんと思う。
四十代になって、ボッシュシリーズに遭って読み始める。
私は、今思えば、いわゆる「中年の危機」を、このシリーズを読みながら超えてきたんだと思うのだ。
そして、五十代も後半の今、変わらずボッシュシリーズを読み続けられている。本当に幸せなことだと思うのである。
ボッシュが老境に差し掛かると同時に、著者のコナリーも年をとる。もちろん、読者の私も年をとる。
いつまで、この幸福が続くかはわからない。
でも、最後まで、このシリーズを読んでいると思う。
いっそ、棺桶に入れてくれ(笑)

さて、うかうかしていたら、続刊もさらに出ているようだ。
近日に入手するとしよう。