Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

わたしを探して

「わたしを探して」J・S・モンロー。

消防設備士試験の勉強の合間に読み始めた本である。
これは大事な要素である。つまり、あんまり面白そうだといけないのだ。止まらなくなっちゃうから(笑)
で、書棚の積ん読の中から、なるべくつまらなさそうなやつを選んで読み始めたわけだ。
そうしたら、意外に二転三転する視点に惑わされて、ウロウロとしてしまい、やっと読み終わったという次第。

物語の最初は、ロンドンの地下鉄で主人公のジャーが、5年前に自殺した恋人ローザにそっくりな人物を見かけた場面から始まる。
ローザは海で自殺し、遺体は見つかっていないのもあって、ジャーは彼女の死を受け入れていないのだ。
彼を気遣った友人はジャーにカウンセリングを受けるように進める。
アメリカ人が大好きな精神科医のカウンセリングで、実際にその医者は魅力的なアメリカ人の美人女医だった。
ところが、ジャーはそのアメリカ人女医を見たことがあると想い出す。
ローザと一緒に通っていたオックスフォード大学に来ていた精神科医とそっくりである。
さらに、ジャーのところにおばのエイミーから連絡があって、ローザの日記が暗号化されて書かれているノートパソコンを見つけたという。
ジャーはノートパソコンを手に入れるが、その暗号を解こうとすると、諜報機関員らしき男がやってきて、ノートパソコンを渡さなければ逮捕すると言う。
ジャーはやむなく、ノートパソコンを男に渡すが、暗号化ファイルはコピーしてあり、知人の力を借りてローザの日記の断片を解読していく。
そんな時、、ジャーのもとに、ローザから謎のメールが届き、私は生きていると伝えるのである。
二人しか知らない場所で落ち合おうとローザはメッセージに書いていた。
その場所にジャーは心当たりがあり、ある港町の岬に向かう。
そこには疲れて記憶が一部欠落した様子のローザがいた。
ところが、ジャーを尾行してきた男がして、ジャーは殴り倒され、ローザは再び連れ去られてしまう。
会社の同僚の助けを得て、ジャーはマックスという男と知り合う。
この男はPR会社を経営しているのだが、もともとジャーナリストで国家間の諜報活動などを取材していた。
ローザの日記には、ローザの父親が外務省に勤務して情報活動に従事していたと書かれていた。
そして、オックスブリッジで行方不明になる多くの学生が、実はそういった諜報活動に従事するため、リクルートされて行方不明から死亡ということにされてしまうのだという。
すでに死んだことになっている人物が任務中に亡くなっても支障がないからである。
ジャーはダークウェブに潜り込み、暗号化ファイルに書かれていたテキストと同じ内容のコメントをしている人物を見つける。
しかし、マックスはローザの日記はおかしいと指摘する。
実は、マックスは記事を発表する際に内容を「盛って」おり、いくつかの虚偽を混ぜている。
その虚偽がそのままローザの日記に出てくるのだ。だとすれば、この日記自体はでっち上げではないのか。
ジャーが何者かに操られている可能性があるという。
ジャーは、ノートパソコンをくれたおばのエイミーにローザの日記を読ませる。
そのノートパソコンはおばの夫、スチュワートのものだった。
おばに調べてもらい、ついにジャーはローザの居所を特定し、仲間と現地へ向かう。
そこで対決した犯人は、、、


虚実が入り混じった文章が続くので、読み手は途中で「あれが事実だったか、虚偽だったか」を考えなければならない。
そして、最後まで虚実が明らかでない事柄が残る、という趣向である。
ローザは戻り、犯人は明らかになる。しかし、事件の構図がすべて明白になったわけではない。

評価は☆。
尾を引く余韻が映画のシナリオのよう。
しかし、この種の作品によくあるように、骨太のテーマには欠けている。
考えさせるテクニックはすごいのだが。
まるで庵野監督のアニメのような、、、(苦笑)

これはこれで、現実的なのかもしれない。
何か事件が起きたあとで、すべてが綺麗に説明がつくことのほうが世の中では少ないかもしれない。
ほとんどの事件が、ともかく犯人が逮捕され、被害者が発見されて解決する。いくつか残された謎はそのまま、ということはよくある。
名探偵が出てきて、すべての謎を掌を指す用に説明してしまう「さて、みなさん」のほうが非現実的なのである。

ただねえ、小説だからねえ。
非現実的でもいいじゃないのさ、などと思ったりもするんですねえ。
苦労して読んできたんだから、少しくらいはご褒美を、、、などと。
ま、世の中そんなわけにはいきませんよ、というのがこの小説の持ち味なのかもしれないけどなあ。