Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

脳には妙なクセがある

「脳には妙なクセがある」池谷裕二

私は脳科学というのは胡散臭い疑似科学ではないか、と思っている。
だって、テレビで時折拝見する「脳科学者」なる人物たち、揃って胡散臭いのであるから致し方ない。
そもそも、大学で脳科学部とか脳科学科なる学部も聞いたことがない。脳神経科の医者は知っているし、脳ドックも受けたことはあるけど。
まあ、そんなわけで「色眼鏡」で見ていた脳科学であるけど、たまたま古本屋で見つけて「暇つぶしに」と思って買った本書。
結論からいえば、予想外に面白かった。充分、暇つぶしになったし、それ以上のヒントが得られたと思う。

そもそも脳科学というのは、どうやら私達の脳の働きを、ほんとに(例えば物理的に電気を流したりして)科学的に観察して、仮説を構築する学問のようである。
あえて「仮説」といったのは、一連の観察の結果をもって論理的な仮説を立てられるものの、その検証となるとナカナカ厄介なケースが多いと思われるからである。
本書には、そんな科学的な観察結果に基づく「仮説」が平易に解説されている。


例えば、寝る前の記憶の「黄金時間」などは、我々自身が受験勉強などで実感することである。
睡眠前に学習して、一晩寝る。人の脳は、睡眠中に記憶の定着作業を行っているらしい。翌朝目覚めて、ちゃんと覚えていることは、ある程度の定着ができた(長い時間覚えている)と言えるそうである。
睡眠不足であると、この定着がうまくいかない。「徹夜で一夜漬け」が、試験が終われば綺麗サッパリ何も覚えていない道理である(笑)。
また、脳は「出力重視」であると言う。つまり、学習をするときに、何度も読む(入力)か、何度も問題を解く(出力する)かで比較すると、圧倒的に「何度も問題を解く」ほうが記憶の定着が良いらしい。
これは、自分自身も資格の勉強をしながら思ったことだが、問題集を解くのがもっとも記憶には効果があった。
資格試験で「過去問のやりこみ」が一番効果的だと言われるのも納得である。

たいへん興味深かったのは、「我々に自由意志があるか?」という問題である。
ある選択をするとき、我々は自由な意思で決定したと思っているが、実際には、そのときの環境で反射で決めているのだそうである。
で、脳は、反射で決めたことを「考えて決めた」と勘違いする性質を持っているらしい。
ある選択をする時に、脳は瞬時に決定をしており、その理屈をあとでつける。そして、脳自身が「理屈でまず考えて、それから決めた」というふうに記憶を改竄してしまうらしい。
これが本当なら、あなたが安倍さんが好きだったり、野党はへっぽこだから嫌いだと思ったりするのは、実は何も考えて決めたことではなく、あなたの周囲の環境がそうさせただけの話で、ただの反射だということになる。
受け入れがたい話だが、脳のどの部位が物事を決めるときに活性化するかを観察すると、ほぼそのような結論が出るそうなのである。
そして、その理由について、実は人間の今までの長い歴史の中で(というか、人間に進化するまではずっとネズミのような生き物だったわけですから)言語をもったのはつい最近だということ。
脳は、進化の長い時間のほとんどを「言語のない世界」で生きてきたので、非言語の世界、つまりは身体の世界の反射であるほうが当然だというのである。
この話で「人は見た目が9割」を思い出した。実は、ほとんどが非言語の世界で決まっている。。。

評価は☆☆。
興味深い話が満載である。ただし、本書の話も「そうらしい」ではあるけど、絶対にそうだと決まったわけでもないと思う。
証明が難しいからである。
半分エンタメとして楽しみつつ、実際に周囲と比べて「あー、なるほどなー」とひそかに納得するのが正しい楽しみかたのような気がするな。

ところで、昨日、いよいよ生涯未婚率が男性では25%を超え、女性でも16%にのぼり、日本の統計上の最高を記録したというニュースがあった。
single40として興味を持たずにいられない話ですが、これは「なぜ独身を選んだのか」という話ではないと思う。
つまり、本書の言い方をすれば「反射」である。
識者が指摘するような経済的な問題もあろうし、独身でも生活に困らなくなったことも影響しているだろう。
また、個人レベルでは「この人と結婚したい」という選択が働かなかった、つまり「非言語的」に独身になった場合もあると思う。
はやい話が「もてない」ということなのだが、これが「非言語的に」決定していることも間違いない。
モテるやつはDNAがモテるのである。生まれつきモテる。モテナイやつは、DNAがモテナイ。死んでも治らない、という。
当たり前だが、モテナイと子孫を残すことができないので、基本的に人類はモテるやつが増える方向に進んでいるはずである。
すでに生物として3億年の歳月を過ごしているので、モテるやつばかりのはずなのだが、それは全員同じである。
つまり、モテるから生き延びてきた我々の中で、さらに毎日「よりモテる」やつの選別が行われているわけで、それが恋愛の正体である。
恋愛は「モテるDNA」の自然競争なのだから、勝敗が生じるのは仕方がないのだ。
かくして、敗北したやつは、個体の死とともに終焉を迎えることになる。それが、長い年月を通じて繰り返されてきた生物の実相なのだ。
自分が「モテナイ」という事実で、「ああ、オレも所詮は生き物なんだなあ」と感じるのが、ただしい「モテナイ流儀」となるのではないか。
ま、無駄なことは諦めて、人生で楽しめることを楽しむべきと悟る次第ですなあ。