本日、最高裁でIT関連の業界人には大変興味深い判決がだされた。
被告人が自分のサイトに「coinhive」と呼ばれる仮想通貨マイニングプログラムを設置した件で、一審の地裁では無罪、二審の高裁では有罪と判断が分かれていたところ、最高裁で無罪が確定したのである。
日本の司法としては画期的な判決かと思う。
このcoinhiveというプログラムは、自分のサイトに訪れた閲覧者のPCに仮想通貨のマイニング(発掘)をさせてその対価をサイト設置者が得る仕組みである。
被告人は音楽サイトを開き、そこにcoinhiveを設置して、いわば広告などの代わりに対価を得られるかどうか実験したと主張した。悪質な意図ではないというわけである。
一方、検察側は訪問者のPCを勝手に利用するのは訪問者自身の承諾を得ておらず「空き部屋を勝手に使うようなもの」だから犯罪だと主張した。
これで地裁と高裁で判断が分かれていたところ、最高裁が無罪という判決を出したので、無罪が確定したのである。
訪問者自身が知らない間に自分のPCを利用して仮想通貨の採掘をやらせるのは、悪質なウィルスなどにもその例がある。れっきとした犯罪である(たぶん)。
しかし、coinhiveは「サイトに訪問している間」しかPCを利用せず、訪問者のPCに感染するようなものではない。
で、サイト訪問者が知らないうちに自分のPCを金儲けに利用されるのがどうか?という争点になると思われる。
で、そんなことを言えば、ほとんどのサイト広告がほぼ、これに該当してしまう。そもそもグーグルはどうなのか?という問題にすらなる。
よく考えてみると、インターネットの世界は「勝手に利用する(表面上はタダ)」で溢れているわけだ。じゃあ、どうしてcoinhiveだけがいけないんだろう?という話なのだと思う。
かつて、金子勇という天才プログラマがP2Pファイル共有ソフト「winny」を開発したとき、やっぱり同じような裁判があった。地裁で無罪、高裁で有罪、最高裁で逆転無罪。
しかし、一度は有罪判決が下ったことで、日本の通信技術を手掛けるプログラマに衝撃がはしった。
今やファイル共有ソフトのP2P技術は様々なところで利用されており、インターネットの世界で欠くことのできない重要技術である。
日本は一度は世界の先端に躍り出たわけだが、そこから大きく後退してしまった。
高裁の有罪判決が開発者らを相当萎縮させたという評価は重い。
ネットの世界の常識はリアルの世界とは少々違うところがある。
法律はまだ追いついていないのだが、私はそれで良いと思う。法律家は、はっきり言えば「ド文系」である。理解は難しいのではないかと思う。
邪魔をしない程度に、リアルの世界でおとなしくやってくれてればいいんじゃないかと考えている。それはNHKも同じですがね(苦笑)