「悪魔の爪痕」霧村悠康。
ある産婦人科医で、分娩を済ませたばかりの若い母親が乳がんで死亡してしまう。
しかし、乳がんは入院時の検査ではひっかからないほど早期であったはずで、早産の危険をさけるために使われた薬の副作用が疑われた。
そこで製薬会社に勤務する女医が調査を行うことになる。
しかし、女医の調査では、薬の副作用ではなかった。
同じ頃、やはりこの産婦人科医の元乳がん患者が近くのがん専門病院に紹介され、そこでもあっという間に悪化して死んでしまう。
女医は、同業者のミスを話したがらないがん専門医から、乳がんの悪化の原因を知る。産婦人科医は、乳がんをただの乳腺炎と誤診したあげく、乳腺マッサージを指示していたのだ。がんの腫瘍をマッサージしたことで、がん細胞がリンパを通じて全身にばらまかれ、患者はあっという間に悪化して死亡したのだった。
そんなときに、この産婦人科医の娘二人が相次いで殺された。絞殺死体の乳房は切り取られていた。
この産婦人科医の過去に恨みを抱いたものの犯行だと思われた。
生き残った娘一人は、重大な決意をもって、女医と打ち合わせを行い、犯人をおびき出すのに成功する。
その犯人は意外な人物だった。事件の動機が明らかにされる。。。
霧村悠康のさきの著作が結構面白かったので、もう一冊読んでみた。
シリーズものらしいが、ヒロインの女医があまり活躍しない(笑)
ストーリー自体は面白く、無理にシリーズにしないでも良さそうな話ではあった。
評価は☆。
産婦人科医で乳がんの見落とし、乳腺炎の誤診というのは恐ろしい事態であるが、実際にありえる話らしい。そして「誤診」ならともかく「見落とし」ぐらいになると、なかなか医療ミスとして損害賠償の対象にもなりにくいもののようだ。
まあ、米国のようにやたら医療ミスが巨額裁判になって、結果医療費が高騰してどうにもならん、という事態は困るわけで、日本の「医者にやさしい」仕組みもわからないわけではない。ただ、どうも誠意の薄い開業医が優遇されて、病院の勤務医にはきつい仕組みになっている点は是正する必要があるんではないかと思うがなあ。
医師会は与党に毎年5億円の政治献金をする巨大圧力団体なので、なかなかメスが入らないというのが正直なところでしょう(苦笑)。
先にも述べたが、やはり疑わしいときはセカンドオピニオンしかありませんね。
結局、心配な人が開業医をすっとばして大学病院に直行してしまうので、いつも大学病院が芋の子を洗う状態になってしまうわけですが。
それでも、本人にとっては一つしかない命なので、どうにも致し方ない。
年をとったら病院には行っておけ、というのは真実だと思います。。。