Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

埋葬された夏

「埋葬された夏」キャシー・アンズワース。

舞台は英国の北海に近い田舎町。
この物語は、1983年から1984年にかけての事件が起こった時期の記述、そして2003年の事件の再捜査の記述が交互に書かれている。
現代の再捜査によって、過去の物語が少しづつ明らかになっていき、ラストに真犯人とその動機がわかるという仕掛けになっている。

2003年の物語では、まずショーンという私立探偵が動き出す。彼は元警官だったが、武装した犯人に撃たれたことで足にボルトを埋め込む羽目になり、警察を辞職した。走れなくなったからである。
そのショーンが、ある弁護士の依頼で動き出す。カルト宗教の魔女と言われている殺人犯コリーンの再捜査のためである。当時の遺留物を最新技術で鑑定したところ、被害者の衣服からコリーン以外の第三者のDNAが見つかったからだった。
事件には第三の犯人がいたのか?そこでショーンは聞き込みをする。
田舎町では、元警官のリヴェットがショーンを迎える。彼は現役の警察からも一目おかれるOBで、ショーンの捜査を手伝ってくれるという。コリーンの事件当時の刑事はそのリヴェットだった。
ここで、話は1983年に戻る。
コリーンはちょっと境界型の知能であり、他人の意図がよくわからず苦労している。そんな彼女にも、高校生の仲間がいる。
ある日、そこにサマンサという少女が転校してくる。彼女はブロンドの美少女で、町を支配しているエドという遊園地経営者の孫にあたる。
コリーンたちはサマンサを暖かく迎え入れようとしたが、実はこのサマンサがとんでもない人物だった。
サマンサに引っ掻き回されて、コリーン達はぼろぼろになってしまう。
そのサマンサも、再婚した母親とうまくいかず、家庭内はぎくしゃくしっぱなしだ。
そして、ある日、サマンサはコリーンが大事にしていた魔術の本を盗む。
コリーンは本を取り戻そうとするが、そこで、決定的な事件が起こる。
その事件は、コリーンではない人物が起こしたのだが、なぜか、その人物は隠蔽されてしまうのだ。。。


著者は音楽ライターだったらしく、各章のタイトルはそれらのアルバム(ロック音楽)のタイトルからとられたものらしいし、コリーン達高校生の風俗もロック音楽を背景に書かれる。
しかし、だ。残念なことに、私はロック音楽をまったく聞かない。大のおとながタイコたたいてワーワー言っている程度の認識しかない(苦笑)
だから、そのあたりの感覚がまったくわからないのだ。
とはいえ、物語自体はまずます面白く、重層的な記述もなかなか読ませてくれた。
そういうわけで、評価は☆。

文学作品の背景に音楽を使うことは難しいと思う。
私は、たとえばクラシック音楽ものであれば、相当に興味深く読むことができる。
しかし、本書でいうような、ロック音楽(パンクとヘビーメタルの間くらい?なのかな)に傾倒している人たちが、クラシック音楽を背景にしたミステリを読んで感興が深くなるということはありそうもない。
それぐらい、同じ音楽と言っても、受け手の感性は異なる。
私はジャズも好きでよく聴きますが、クラシックとは違うリズムやジャズのイディオムが楽しいのだが、ロックにはまったく何も感じない。
リズムもコードも単純で、何がいいのか、わからないのだ。煩いと思うだけである。
唯一の例外はスティーリー・ダンで、あれはジャズっぽく、コードの使い方が良かった。あとはだめ。

ま、文学作品で音楽がからむやつは、自分の好きな分野を選んだほうが無難だと、、、当たり前の話でした(苦笑)