Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

亜米利加ニモ負ケズ

「亜米利加ニモ負ケズ」アーサー・ビナード

 

私は英語が苦手である。よく言われるが「日本人は6年間も英語を習うのに道案内もできない」まさにそうである。
実は、私は受験英語を得点源にしていた。
理由は簡単であって、そこそこの単語力を持っていたからだ。
ほとんどの英単語を「犬寝る犬小屋」方式で、カタカナでみんな語呂合わせ式に覚えていた。語呂合わせを考えているうちに、だいたい覚えてしまう。
受験で使われる英語は「出る単」「しけ単」で3000から5000程度ですので、ほぼ、語呂合わせ式で8割くらいカバーできる。
よく「長文はわからない単語があっても前後から類推して、、、」などといいますが、あれは嘘です。
3つも4つもわからない単語があったら、英訳なんか無理。受験英語は単語力でほぼ決まりだと思う次第。
もちろん、こんなやり方なので、発音はメタメタ、だってカタカナで覚えているんだから(苦笑)
この方式で、大学でも英語はずっとAをとった。(苦笑)
一言も喋れないのはもちろん、原書で読書もできない。語呂合わせの単語を思い出すのに時間がかかり、思い出したときにはスジを忘れている(笑)
あくまで、試験用紙のプリントにおさまる長さの英語を相手にして、回答をひねるだけの策なのであった。

このように何年やっても駄目な英語なのだが、一つには、英語と日本語が発音はもちろん(私の語呂合わせ式は苦肉の策である)文法もまるで違うからだと思う。
よく欧州人が何ヵ国語とかやっているが、あれは欧州の言葉が英語を含めてフランス語、ドイツ語もすべてラテン語の方言だから、という話を聞いたことがある。
日本語と朝鮮語の文法は似ているから、おそらく、日本人が朝鮮語を覚えるのは遥かにラクにちがいない。といっても別に朝鮮語をやるメリットがないのでやらないが(苦笑)
というわけで、私は欧米人で日本語がたくみな人をみると「すごいなあ」と思うのである。
立場的には、英語を学ぶ我々と同じである。かなりの難易度だろうと思う。
困ったことに、さらに日本語には漢字という難敵がある。その壁はいかばかりか。
で、本書のアーサー・ビナード氏の日本語に対する造詣の深さには驚かされるのだ。
「亜米利加ニモマケズ」どころではなく、完敗というのが正直な気持ちである。
日本人なのに、米国人の日本語に敗北を認めるというのは忸怩たるものがあるが、もう仕方がないやというレベルですごい。

本書は、アーサー・ビナード氏による日本語のエッセイである。
英文を翻訳したのではなく、氏自身の日本語で(それも極上の!)書かれている。
いずれも日本語と、なかには英語の深い知識が両方生かされていて、氏でないと書けないものだと思う。
たとえば、宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」が米国の郵便配達夫の誓いの言葉と瓜二つという指摘などは、驚きである。
読んで思ったのは、ほんとうに賢治の元ネタはこれではないかということ。
雨ニモマケズは、賢治がノートに書き記していた詩なので、別に外部への発表用ではなかった。
自分自身のために、英文を日本訳して、少しアレンジしたと考えて全く違和感がない。
これは説得力のある説だと思った。

 

評価は☆☆。
そのほかにも、目から鱗の珠玉のエッセイ集である。
何よりも美しい日本語に癒やされる。

外国人でも、日本人と同じような感性をもっているんだなあと感じたりする。
しかし、その逆に、やっぱり日本人とは違うなあと感じたりもする。
実際には、似ているところもあれば違うところもあるというのがほんとのところなんだろうと思う。
なんでもそうですが、一面だけですべてと断定するのは間違いではないかと思う。
だいたい、すべての誤判断は、そんなことから始まるような気がする。