「催眠」ラーシュ・ケプレル。
スウェーデンのミステリである。
ストックホルムで一家惨殺事件が起きる。父親はスポーツ場のシャワー室、母親と息子、下の娘は自宅で刃物で惨殺されていた。息子は深手を負っていたが、唯一の生き残りだった。上の娘は行方不明である。
事件を捜査したヨーナ警部は行方不明の姉も殺害される危険があると考え、瀕死の息子から犯人像を聞き出そうとする。しかし、容態は悪く、普通の手段では困難だ。
そこで、エリック医師に催眠術をつかって聞き出すように依頼する。
エリック医師は抵抗するが、人命がかかっているので、やむなく協力することになる。
瀕死の息子の口から出てきた真相は、驚くべきことに犯人は息子だということだった。
息子は一家を殺害し、自殺しようとして失敗したのだ。姉も殺すと言う。
ヨーナ警部は息子に警護をつけるが、瀕死の状態から回復した殺人鬼の息子はあっさり警察をまいてしまう。
息子は催眠術をつかわれたことを恨みに思い、エリック医師も殺すという。
警察は姉とエリック医師に警護をつけるが、またもや息子を取り逃がす。
そして、次にエリック医師の息子のベンヤミンが誘拐されて行方不明になる。
エリック医師は、自分が催眠術を使わないという誓を破ったことが事件を起こしたと考える。エリック医師は10年前に、催眠術をつかった治療サークルをつくって研究していた。そのときの患者たちのなかに、ベンヤミン誘拐の犯人がいる。
エリック医師の過去の事件が明かされる。
現在の一家惨殺事件と、エリック医師の過去の催眠術サークルの事件が重なるのだが、どちらかといえば催眠事件のほうが実は鍵となる。冒頭の惨殺事件はほんとに導入に使われただけのような感じである。
エリック医師が催眠をやめた理由や、その家族のものがたりがメインテーマである。
評価は☆。
かなりの好評だった小説らしいが、とにかく、警察がありえないほど無能で、しょっちゅう犯人を取り逃がしたり見過ごしたりばかりしている。
それでいて、このヨーナ警部が敏腕ということになっているのだから頭がいたい。
犯人捜査の基本を踏まず、単独行動ばかりしてはドジをふむ警部のどこが敏腕なのか、まったく理解に苦しむ。
このヨーナ警部の無能ぶりに呆れてしまった。
もう少し、なんとかならなかったのかな。
エリック医師の妻のシモーヌもかなりのお馬鹿さんだ。
夫が約束を破って催眠をやったのでむくれると、息子が誘拐されて大事なときに芸術家を連れ込んで浮気。なにを考えているのかなあ。
これがリアルな現代の家族の再生だということなのかもしれないが、共感できないこと、おびただしい。
思うに、北欧の人々の感覚とはるか東洋の島国の猫かい老年との間には、かなりの距離があるにそういないのだ。