Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

火星の人

「火星の人」アンディ・ウィアー。

火星に一人取り残された男がいかにサバイバルするかという物語。火星版ロビンソン・クルーソーである。

宇宙飛行士のワトニーは、他の5人のクルーとともに火星有人探査に参加。
しかし、火星の嵐に巻き込まれて、一行は予定より早く緊急脱出し地球に帰還することになる。
ところが、嵐のために折れたアンテナがワトニーを直撃。彼は嵐に吹き飛ばされて見えなくなり、宇宙服に取り付けてある生体センサーの値もゼロになってしまったので、一行はやむなくワトニーを見捨てて母船に搭乗し、帰還することになる。
しかしワトニーは生きていたのだ。アンテナはワトニーの脇腹をかすめ、生体センサーを吹き飛ばした。
したがってセンサーの値はゼロになり、宇宙服は自動的に収縮して傷口をうまく塞いだため、止血された形になって彼は助かったのである。
こうして、火星に一人取り残されたワトニーは生き残るための戦いを開始した。
まずは予定より早く脱出が行われたことで残った資材があり、しかも人数が6人分のところ1人で済む。
そこで時間はあると気づいたワトニーは、自らの排泄物を肥料に使って火星のハブ(基地)の中でジャガイモの栽培を始める。
バクテリアは地球から実験用に持ち込んだもので、水はロケット燃料のヒドラジンを燃やしてつくる。(ヒドラジンは水素化合物なので燃やすとH2Oつまり水ができる)
さらに、ローバーを使って過去に火星に持ち込まれた探査機パスファインダーまで行き、通信機を手に入れて地球との交信を復活させる。
一方、地球では火星表面を観察してワトニーが生きていることを早期からつかんでおり、彼を救助するためにありとあらゆる方策が検討される。
しかし、ただちに発射可能な有人ロケットはない。NASAは、とりあえず至急手持ちのロケットで、ワトニーに食料その他の補給品を送ろうとする。
しかし、ロケットはスケジュールを急ぎすぎ、チェックを省略したために打ち上げ失敗。
一方、ワトニーは工作作業中に耐用回数を過ぎたエアロックが爆発、ハブのジャガイモは全滅してしまう。
すでに収穫した分は残っているものの、次回のNASAのロケット打ち上げまでは持ちそうもない。
絶対絶命のピンチに立たされたワトニーだが、すでに地球回帰軌道に入っているはずの母船が彼を救うためにミッションを開始する。。。

最大の見ものは、火星でのサバイバルの描写がひどくリアルなことで、著者の知識がたしかなものであることを感じさせる。
ロビンソン・クルーソーが好きならハマると思う。
評価は☆☆。
それにしても。
この本を読み終えた途端に我が国のロケット打ち上げが失敗するとはなあ。。。ユングが聴いたら喜びそう。

 

この小説だが、実は出版まで非常に面白い経緯を辿っている。
もともと、この小説は著者のホームページで連載されていたもの。
読者が増えて評判になり、まとめて読みたいというのでアマゾンKINDLE自費出版された。
実は、アマゾンKINDLEでは比較的かんたんに自費出版ができる。
で、この自費出版されたKINDLE版も大評判。
これを出版社がほうっておかず、紙の出版権利と映画化権がたちまち売れた、という形でデビューとなった。
年間小説ランキング売上で12位をとったというので、かなり売れた小説ということになる。
いかにも、現代らしいデビューの経緯である。
まだまだ出版デビューでは新人賞の懸賞応募が一般的なわけですが、こんな方法もあるということであろう。
日本では、藤井太洋さんのデビューが同じような経緯を辿ったと思う。
時代も変わりつつある、ということなんでしょうなあ。