Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ナイト・エージェント

「ナイト・エージェント」マシュー・クワーク。

帯に「マイクル・コナリーも絶賛!」とある。コナリー先生がおすすめであるから読んでみようと思ったのである。

主人公のピーターは若き情報部員で、ホワイトハウスの地下で夜勤をしている。
彼の前には1台の電話機があって、その電話がなったら必ず上司に回さなくてはならない。ほかの仕事もあるのだが、実はその電話番だけが彼の本来の仕事である。
彼が夜勤を開けると、次に昼の当番が電話番を引き継ぐ。
彼の父も情報部員だったのだが、敵国に通じたスパイであると疑いをかけられて自殺した。真相は謎である。彼は、父の無実を信じている。
自分がいつか父の汚名を晴らしたいと考えて情報局に就職した。
彼の就職をあっせんしてくれたのは、彼の現在の女上司のファーである。彼女は大統領選挙で貢献し、そのポストを得たやり手だ。
彼の前の電話は半年前に1回鳴ったきりだった。
ある夜、その電話がかかってくる。若い女の声だった。
声の主はニューヨークでの起業に失敗して叔父夫婦の家に居候していたローズで、すでに引退生活に入っているはずの夫婦が何者かに襲撃されたのである。
ピーターはその電話を上司のファーに回し、ファーはただちに動いて救出部隊を向かわせるが、残念ながら叔父夫婦は死亡。
ローズは一人で生き残った。
ピーターはローズに接触してはならないとファーに言われるが、ローズは何者かに狙われており、ピーターはその護衛をするようになる。
どうも、叔父夫婦が襲撃されたときに、ローズが「ファイル」のことを聴いたのではないか?という疑いがかけられているらしい。
ローズには「ファイル」のことなどは何もわからないが、断片的な言葉だけを聴いていた。
ローズの聴いた「ファイル」には、何が書かれているのか?
そして、ローズが「ファイル」のことを知っているという理由だけで、どうして狙われなければならないのか?
どうも「ファイル」には、国家的な機密が記してあったようなのだ。
ファーはローズに警護をつけるというが、それなのにローズは狙われ続ける。つまり、ローズの行動が筒抜けになっている。
ピーターは気がつく。ピーターがローズの行く先を話していたのは、ファーだけだ。つまり、ローズを狙っているのは、ほかでもないファーだということになる。
なぜファーがローズを狙うのか?
物語にはさらにロシアの殺し屋スパイまでも登場し、二人は危機に陥るが、意外なところから救いの手が現れる。。。


物語のテンポはなかなか良い。
古典的な米露対立の構図が中心にあるのだが、そこに実は露が大統領選挙に絡んでいたことがポイントで、作中に出てくるファイルは、その工作に関わった人物たちの記録ということになる。
なにやら、トランプ時代のロシア疑惑に近いような構図である。
評価は☆。
せっかくのコナリー先生の推薦だし、物語の「深夜の電話番」という主人公の立ち位置もいい。
ただ、物語の進展があまりにテンポが良すぎて、ちょいと薄いような気がする。
読みやすさという意味では良いし、あっと驚く展開も用意されてはいるのだが、少しご都合主義的な部分が鼻につくというか。。。
まあ、そうしないと物語がうまく進まないという事情は理解できるし、悪くはないのだけど。

有名な話に「吊り橋効果」というやつがあって、危難をともに乗り越えた二人の仲は深まるのだそうである。
で、本書も当然にそのようになる。
しかし、現実の世界にそんなにあっちこっちに吊り橋があるわけじゃない。
婚姻率の低下から少子化に苦しむ我が国であるが、国の政策として、いっそあちこちに吊り橋をぶら下げてみてはどうだろか?
意外にいいかもしれないぞ。
あながち冗談ではなくて、と思っているのだ。
少子化対策とか言って、毎年巨額の予算を投入して保育園をたくさん作っても、子どもは増えない。
当たり前である。子どもが「生まれたあと」のことをやっても、そりゃ子どもは増えませんって。
生まれる前に手を打たねばならんのだ。
というわけで「吊り橋作戦」勇気を持って断行する政治家は、、、いないわなあ(苦笑)