「殺す女」ウェイン・バーカム。
古書店で捨て値で転がっていた。暇つぶしに読んでみたら、あらあら。。。
冒頭は悲惨な殺人シーン。飲んだくれの父親が、幼い娘ラッキーの前で母を殺す。ワインボトルで母を撲殺したのである。
父は、自ら警察を呼び、自分で階段から落ちて死んだと作り話をする。事前に娘には話を合わせるように脅してあった。しかし、娘は警察官の質問に「お父さんが殺した」と真実を告げる。娘の告発により、父は長期の刑務所生活へ。
やがて、美しく成長したラッキーは、名前を変えた上で編集者の仕事をしている。
そのとき、女が客の男をワインボトルで撲殺する手口で、連続殺人が発生する。女は男について、深い怨念を持っていると思われた。
そんなとき、ラッキーの父親が刑務所から出所してくる。父は幼い娘に性的虐待を加えていた。母に咎められて母を撲殺したのである。父は、復讐の怨念にかられて娘の居所を探す。
ラッキーは、そんな父の接近に気がついていた。
一方で、彼女は刑事フランクと交際している。フランクはワインボトル連続撲殺事件を捜査している。
刑事フランクは、事件の真相に近づくことができるのか?
そして、ついに父が娘のところに現れて。。。
実に面白い。手に汗握るサスペンスであり、そして、ラストには意外な真実も現れる。
なんとなく、よく出来た2時間ドラマのシナリオを読まされたような感覚もあるが、いかにもアメリカで人気がある作家の作品である。リーダビリティに優れてスキがない。
評価は☆☆。
なんで、この本が日本では話題にならなかったのか、ちょいと理解に苦しむ。
翻訳が悪いというネット上での書評があるが、私見によれば、ぜんぜん悪くない。すらすら読める。
叙述トリックがあからさまなのがいけないのかなあ。
叙述トリックと言えば「アクロイド殺し」が有名で、日本の作家では、個人的には「葉桜の季節に君を想うということ」歌野晶午が傑作だと思う。
その他、あまたの作品がある。
ところが、多くの日本人がは、ミステリマニアを除いて、どうも叙述トリックが好きではない人が多いような印象を受ける。なかには、「人を騙すのが目的なのか」と怒りだす人もいるようだ。
「まんまと騙された自分」を楽しむのが良いと思うのだけど、世の中には余裕のない人が多いのかなあ。
現実世界で騙されるのは非常に面白くないが、フィクションの世界で騙されるのは面白いと思うのだけどねえ。