Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

架空対話---死後の世界について。王充対ヒルベルト

王充。A.D.27-97。儒家。迷信を廃した合理主義で有名。著書「論衡」
ヒルベルト。A.D.1862-1943。数学者。公理主義で有名。

(以下、王充を王、ヒルベルトをヒと略)

王「死後の世界はない。」
ヒ「何故かね?」
王「人間は必ず死ぬ。つまり、今までのすべての人間は死んでいる。もしも死後の世界があるとしたら、死人でいっぱい、大混雑になっていなければならぬ。なのに、幽霊が大混雑という話は聞かない」
ヒ「それは、死後の世界は有限であるという仮定に立つからである。もし無限であれば、無矛盾である」
王「人間は必ず死ぬのだから、無限に死ぬことになる。無限の空間も無限にいっぱいになろう」
ヒ「今、無限の部屋数があるホテルが在るとする。そこに、無限に客が在室である。つまり、ホテルの部屋は満室である。そこに、新たに100人の客がくる。どうなるか?」
王「部屋は満室である。泊まれないであろう」
ヒ「いや、部屋番号1の人は101へ、部屋番号2の人は102へ、、、という風に、自分の部屋数に100を加算した部屋へ移って貰うようにすればよい。100室の空室ができる。故に、宿泊可能である」
王「しからば、無限に客が来たならばどうか」
ヒ「自分の部屋番号が1の人は2へ、2の人は4へ、、、というように、自分の部屋番号を倍にした部屋へ移動して貰えばよい。無限の部屋が満室であっても、新たに無限の客を宿泊させることが可能である。有限の世界の論理は、無限の世界では正しいと限らない」

王「しからば、人が死ねば幽霊になるというが、みな着衣である。死んで魂になるというのであれば、来ている服も一緒に死んで魂になるというのか?幽霊は裸でないのは奇妙である」
ヒ「それならば、あなたは何故裸でないのか?」
王「どういう意味かな?」
ヒ「あなたが生まれたときに、服を着ていたのでれば、あなたの論理は成り立つ。死後の世界の人間がいれば、あなたを見てこう言うであろう『人間は服を着て生まれてくる、なぜなら、生きている人間は、みな服を着ているではないか』と。ところで、あなたは裸で生まれたにもかかわらず、今服を着ているとすれば、生きていると死んでいると、服を着ていると着ていないは無関係である。つまり、対偶を満たさねば証明は失敗である」

王「いやはや、数学者とは、へんてこりんな理屈をこねる者達が後世現れたものだなぁ」
ヒ「あなたのほうが、よほどヘンですよ」

二人は笑って、それで対話はおしまいになった。二人とも、もう既に霊魂になっているのだからね。