Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

なぜアメリカ大統領は戦争をしたがるのか

「なぜアメリカ大統領は戦争をしたがるのか」越智道雄

おもしろいタイトルに惹かれて。
しかし、はじめに言うと、その説明はありません(笑)。これ、羊頭狗肉じゃないのかな。

まず、アメリカ大統領選挙の仕組みが複雑怪奇である。大統領選挙人を選挙民が選ぶという間接選挙を通して、一応、大統領が選ばれることになっている。
で、この選挙人は、前もって誰に投票するかを表明しているのだそうだ。ところが、実際には違う候補に投票できる。罰則を食らうけど。
おまけに、その大統領選挙人を選ぶ票数のカウントが複雑怪奇で、州によっても異なる上に、そもそも各州の票数の格差もすごいわけだ。
これって、本当に民主主義と言えるのかしらん?
摩訶不思議としか言いようがない。どうにも、理解に苦しむのである。

さらに、いわゆる「三権分立」だが、実際は司法が行政に対して「違憲判決」を下すケースなんて滅多にないそうだ。
日本で言うところの「統治行為論」に似ている。著者は、この点がご不満なようだが、そもそも裁判官から国家権力をとってしまえばタダの試験に受かっただけのおっさんである。致し方ないだろう。

で、問題は議会である。いわゆる「立法府」だが、この役割は、基本的に民主主義のガード役、つまり大統領に対しては基本的に対立する宿命にあるのだそうだ。
日本のような間接選挙による議会制ではないので、議会は大統領に対して常にブレーキ役でしかない。
その議会の最後の手段が「弾劾」だが、歴代のアメリカ大統領で弾劾にかけられたのは3人だけなのだそうである。直近が、「不適切な関係」のクリントン元大統領である。

一方、大統領側にも切り札「拒否権」があって、こいつを出される議会も「2/3再可決」しかないのだそうだ。どこかの国とそっくりである。

評価は☆。うんざりするほどの大統領選システムに加え、しょっちゅう暗礁に乗り上げてしまう民主主義システムにがっかりさせられること請け合いである。
これほどの手間をかけても、なお我々には民主主義しかないのであって、著者はすっかり保守化し陰謀ばかりする共和党に批判的である。
かつて奴隷解放北軍だった共和党は南部保守派の牙城となり、反対に南軍だった民主党はリベラル政党に生まれ変わった。
しかし、どういうわけかアメリカ政治を深刻なねじれが覆い、貧困層が多い南部が進んで格差拡大の新自由主義共和党を支持し、北部エスタブリッシュメントの裕福な白人男性は「黒人差別よりも女性差別の腰抜け」なのでオバマ支持なのだという。

だけど、こういう見解は、どんなもんかね?逆にヒラリーが勝てば「女性差別よりも黒人差別が深刻」だと論じればいいわけで、このあたりの理屈は結果論以外の何ものにも見えないけどな。
著者は、ずいぶんクリントンに肩入れしているみたいだからねえ。

だいたい、リベラルな民主党と言いながら、第一次大戦、第二次大戦、ベトナム戦争と、すべて開戦時の大統領は民主党だし。
そうえいば、イラク戦争だって、最初に空爆やらかしたのはクリントンじゃないか。
アフガンだって、軍事介入をもっとも強硬に唱えたのはヒラリーだった。タリバーン政権が、婦人の権利を蹂躙しているというのが、その主張だったはず。
「リベラル」「社会保障」を標榜する民主党は、ある意味で理想主義だから、それだけに暴走の危険も大きいのじゃないか。
あっという間に腰砕けになって、とっとと北朝鮮と手打ちをしたがる共和党も困りものだけどね。

普通に考えるのに、やっぱり「ブッシュ家-クリントン家-ブッシュ家-(クリントン家)」とつながる大統領は、あんまり民主主義的とは思えませんがねえ。
民主主義といいつつ世襲制。そうなっちゃうのは、ちょいと困るでしょ。
父親の能力が息子に確実に受け継がれるわけでもないし。もちろん、我が国も例外ではないぞ(笑)。

まあ、私としては、このままマケインの勝利を願っていますので(笑)別にどっちでもいいんですなあ。