Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ラスト・コヨーテ

「ラスト・コヨーテ」マイクル・コナリー

ボッシュシリーズの未読作品を続けて読んでいる。主にハヤカワミステリ文庫のものである。
ハヤカワミステリはかなり迫害されていて、なかなか書店の棚にないのである。
古本屋でみつけると、うい嬉しくなるのですなあ。

で「ラスト・コヨーテ」である。
このシリーズの主人公ボッシュ刑事は、幼いときに母親(職業は娼婦だった)が殺人事件で殺されて孤児院で育ったという過去を持つ。
その母親の事件を捜査することになるのが、この作品なのである。

ボッシュ刑事は、上司とトラブルを起こし、強制休暇を受けている。
カウンセラーのもとに通ってカウンセリングを受けないと、職場に復帰できないのである。
嫌々カウンセリングに通うボッシュだが、そこで、過去の母親の件がトラウマになっていると指摘を受けるのだ。
反発するボッシュだが、とにかく仕事がないのだからヒマである。
そこで、母親の過去の捜査記録を読むと、唖然とする。まともな捜査が行われた形跡がないのである。
ボッシュは、33年前の事件を追って、丹念に聞き込み捜査を開始する。
そうすると、次々と意外な事実が現れてくる。
そして、ついに、真犯人を探り当てることに成功するのだが。。。

ボッシュ・シリーズはほの暗い雰囲気が魅力なのだが、わけても本書は暗い。
いや、もう1冊をあげると「夜より暗き闇」かな。
ただ、本書のほうがストレートであろうと思う。

コナリーは素晴らしい。☆☆とする。
☆3つにしないのは、この先、さらにすごい作品が出たときに困るからだ(笑)コナリーなら有り得るのだ

幼い子どもにとって、母親は絶対の安心の対象である。
それは、仮に母親の職業が娼婦であろうと、まったく変わりはないのである。
プールの時間に、突然呼び出され、手荒に身体を拭かれて、母親殺害についてのニュースを聞かされるのが、子どもにとってどれほど重たいかは、想像にあまりある。

私は、幸い、母が健在である。
父も、だいぶんガタが来ているようだが、まだまだ長生きしそうだ。有り難いことである。

私の場合、絶望感は、いつも病気のときにやってくる。
既に10数年前だが、メニエール病で倒れて、1週間、起き上がることすらできなかった。
その時も、事業がダメになったばかりで、健康保険証すらなかったのだ。
収入もなく、働くこともできない状況に陥ったと理解したとき、私が何を考えたかは、言うまでもない。
そのときに、同棲していた婚約者は、出て行くことになった。
彼女が悪いとは思わない。すべてを招いたのは、やはり私であると思う。
そのとき、私の再起に手を貸してくれたのは、やはり父母であった。

なんとか、父母を安心させたい、喜ばせたいと考えてやってきた。
それができた、と思った瞬間もあった。
そんな日々は、砂のようにさらさらと崩れていった。
そして、今また、苦しんでいる。もはや自分の業であろうと思う。
それでも、私は戦うしかない。それが東京の生活なのだ。

だから、やっぱりコナリーに惹かれるのだろうなあ。