Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ナイン・ドラゴンズ

「ナイン・ドラゴンズ」マイクル・コナリー

連休で久しぶりにのんびりしたスケジュールだったので、コナリーに手を伸ばす。
ボッシュシリーズの新作である。

発端はLAの酒店主人の射殺事件。
防犯ビデオを検証していると、殺される前日に、ある男にお釣りを渡すふりをしながら、多額の現金を渡しているのを発見する。
家族の証言から、店主がチャイナ系マフィア「三合会」に「みかじめ料」を支払っていたことがわかる。
三合会がからんだ金銭トラブルが原因だと見たボッシュたちは、犯人とおぼしき男を逮捕する。
すると、香港に離れて暮らしている娘のマデリンの携帯から、ビデオレターが届く。
そこには、何者かに拉致されたマデリンが写っていた。
前妻のエレノアは、ボッシュと離婚した後、娘を連れて香港で暮らしていたのだ。
懇意にしている鑑識官から、ビデオの背景分析をもらったボッシュは、そのまま週末に香港に飛ぶ。
香港でビデオ分析の背景から、犯人は九龍に潜んでいると推察し、有名なチョンキンマンションに突入するボッシュ
逃げる拉致犯との銃撃戦になり、流れ弾に当たった妻のエレノアは死亡する。
娘を取り戻すべく、半狂乱になり、銃弾を撃ちまくることにまったくボッシュはためらわなくなる。
そして、ついに娘を人身売買の現場のクルーザーから間一髪、救出。
ついにLAに娘を連れて帰ったボッシュだったが。
意外な事件の真相が明らかになり、娘は思わぬ真相を語り始める。。。


長くシリーズものを読んでいると、物語の原点を忘れてしまう。
本作の主人公ボッシュは、もともとベトナムの帰還兵なのである。
銃撃戦も捕虜奪還作戦も、慣れている「モグラ」だったのである。

しかし、過去のボッシュ作品では、そういうシーンはあまり描かれていなかった。
危険な現場でも、拳銃を所持しないケースが圧倒的に多いくらいだ。
本作で、ボッシュは家族という「弱さ」をさらけ出し、制御不能の暴走をする。

ハードボイルドというと、日本では「眉ひとつ動かさず、鉄砲をぶっ放す」イメージがある。
しかし、それは、米国の小説にはもともとない。
伊達邦彦もゴルゴ13も、きわめて「日本的」な存在なのである。
本当に銃をぶっ放すときは、人は平静ではない。どこかで狂っている。
その狂気を本作では描く。

評価は☆☆。
いったん読み始めると、香港に行くあたりから、もう止めることは不可能になる。
今までのシリーズからすると、違和感がある。
その違和感こそが、本作のテーマである。

やっぱりコナリーだなあ、と思うわけだ。
仕方がないので、次作も読まねばならん。
また生きていく理由ができたわけである(苦笑)。