Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

中国はどこまで崩壊するのか

「中国はどこまで崩壊するのか」安達誠司

トランプ大統領中共に「貿易黒字の削減」を強硬に主張、関税の大幅引き上げを実施して、支那の経済は下降気味である。
今、ちょうど春節の季節だが、名物の「爆買い」もナリを潜めているらしい。
対中強硬政策は、トランプ大統領のみならず、民主党側も同じスタンスであるようで、この一点だけは米国の与野党が一致しているらしくみえる。
となると、さすがの支那経済も、かなり厳しいことになるのではないか。
そんな興味から読んでみた一冊である。
ちなみに、本書の刊行は2016年なので、まあまあ近い。
この手の本は、話題になったときに慌てて出版された「書き飛ばし」本を読んではダメだと思うのである。
確かな見識に基づいて、ごく近いタイミングで書かれた本であれば、その後の展開が当たっているかどうかで、その本自体の信用度もわかるというものだ。
その意味で、本書はごく穏当な選択であると考える。


冒頭、著者は支那経済の本は「とてつもなく大崩壊するぞ」か「なんの根拠もないけど大発展、中共万歳」か「私だけが知っているここだけの話」の3パターンしかないと指摘する。
思わず苦笑してしまう。2000年以降「中国経済は崩壊する!」というタイトルで刊行された本のいかに多いことか。しかし、一向に崩壊せんではないか(爆)。
まあ、そんなノリはよその著者にお任せして、ひとつオーソドックスな近代経済学を使って支那経済を見てみよう、というのが本書の趣旨である。
この試みはおおむね成功しており、とても説得力のある内容になっている。

で、ごくカンタンにかいつまんで紹介すると。
本書の刊行時で、支那経済のGDPが一人あたり平均8000ドルであった。(現在は8900ドルである)。
近代経済学では、一人あたりGDP5000ドルから中進国、2万ドルを超えると先進国である。
(ちなみに、日本は3万ドルを超えているので、立派な先進国である)
中進国には、有名な「中進国の罠」というものが存在する。
途上国の間は、人件費の安さを武器に、簡単な組み立て作業などを行う工場をつくって、フタ桁成長を遂げることも可能である。
しかし、だんだんと生活水準が上がり、賃金もあがると、この手は通用しなくなる。
さらに高付加価値のモノを生産しないと成長が難しくなる。
その上、経済成長を遂げると通貨価値が上がってくるので、余計に輸出ドライブが難しくなる。
所得が上がってくれば内需主導に切り替えていくのだが、その舵取りが難しい。
内需だけで食っていくにはまだ市場が弱いし、輸出も競争優位が弱ってくる。
結果、中進国になった途端に成長がスローダウンし、なかなか中進国を抜け出して先進国になれない。これが中進国の罠である。
で、支那経済はこの中進国の罠を克服できるかどうかで、行方が変わる。

まず、さらに経済の自由化を進めて、多少の痛みを伴う改革を進め、外資の呼び込みと先端分野への技術移転を盛んに行う手がある。
もっと資本主義的な傾向を強めるわけだ。
こうして、さらに高度経済成長を持続させる。
ただし、そうなると共産党支配が揺らぐ懸念もある。
このストーリーが45%。

大きな改革を行わず、現体制のままで、経済のスローダウンをやむなく覚悟する。
共産党支配の継続性を重んじる作戦である。
この場合、中進国の罠そのままに、3%以下の成長に甘んじることになる。
このストーリーは55%。

国内でむりやりな増産を続けて、ダンピング輸出をばんばん続ける。
当然、国際社会との摩擦も高まる。
国内の不満も高まる。
過剰在庫の一掃と、国内不満のはけ口を求めて、国外に人工的な需要を作る。早い話が戦争である。
この確率が5%。


評価は☆☆。
なるほどなあ、という感じである。
現状の中共の状況を、うまく把握しているようにみえるのだ。
習金平政権は、おそらく、多少の低成長を甘受しても、共産党支配を固めるほうを選んでいるように見える。
中進国の罠にはまる期間を、各種政策を総動員して、なるべく短期で切り抜けようという作戦だろう。
しかし、そううまくいくかどうか。
国内の不満が高まれば、やむなく、軍事的な冒険に打って出る可能性も残されている。
たぶん、台湾、そして尖閣、もちろん沖縄も含めてが危ないと思う。
北朝鮮くらいは大したことがないが、中共の状況は注意深く見ていく必要がある。
米国に叩かれてざまあみろ、などといっている場合ではないのである。

万が一の事態になったら。
韓国には注意した方が良いですなあ。
ありゃあ、どう見ても小早川秀秋に見えて仕方がないんですよ。。。