Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

「郵政民営化」は大きな問題ではない?!

小泉首相の解散は、郵政民営化の是非を問うものであることは明らかである。
一方、野党側は「郵政民営化は、現在の日本の政治において、重要な問題ではない」と言って応戦している。
これは、本当であろうか?
たとえば「福祉」「年金」問題などは、確かに有権者に分かりやすいキーワードである。
しかし、私は小泉首相の「この程度の改革ができないで、他の改革ができるのか?」という指摘を支持する。

自民党特定郵便局の結びつきについては、以下のURLを参照されたい。
http://shinsho.shueisha.co.jp/toranomaki/010821/
自民党にとって、特定郵便局長の団体「大樹」こそ、選挙違反も問わない最大の集票組織だ。
そして、この郵便局を通じて集められたカネが特別会計によって各地方にばらまかれ、政官財がこのカネにたかる構造が出来あがっている。それは審議されるようになった、というが、どうせ、今度は審議するやつのところに分け前が流れるだけのことだろう。

およそ全国に18000局あると言われる特定郵便局の局長がほとんど「世襲制」で、給料の他に「渡しきり経費」を含めると年間1500万円にもなるらしい。これを税金でまかなっている。「田舎の郵便局がなくなる」というが、それならもっと経費の安い簡易郵便局を増やせば良いはずだ。ところが、そうはならない。それは、特定郵便局長が現代の地頭に等しい存在だからだ。武力の代わりに票を持ち、小領主として地域に君臨している。

簡易保険の資産120兆円は、大手生保上位4社の合計額に匹敵。
郵貯の資産220兆円は、4大金融グループ(三菱、UFJ,みずほ、三井住友)より大きい。
それでいて、公社事業であるから税制面での優遇措置がある。つまり、普通の会社なら、当然支払うべき税金を払わない。反対派は「公社は黒字」だという。なのに、これら優遇措置については口を閉ざしている。黒字ならば、民営化しても大丈夫な理屈であろう。
法人税等・・・4400億円
固定資産税・・・110億円
預金保険料・・・1848億円
印紙税・・・300億円
保険契約者保護機構・・・280億円
以上、6938億円。毎年、これだけの税が優遇されている。
郵政民営化が、これでも、大きな課題でないというのであろうか?
27万人の公務員が、世襲制の郵便局長18000人が、国民の税金を投入しつつ必要であろうか?

ガソリンスタンドは、全国で最大時から比べて1/3に減った。自由化にともなう、大変な環境の変化であった。
生き残りをかけたスタンドは、セルフサービスでコストダウンしたり、コンビニを経営したり、ファミレスに転業したりした。もちろん、倒産したり吸収合併もあった。
何もガソリンスタンド業界ばかりでない。生き残りをかけて、民間企業は必死の努力を行っている。
それが、当たり前の企業の姿である。

福祉、年金の問題はこれから「団塊の世代」がリタイヤするにつれて、更に巨大なものとなる。
このままのペースで行くと、仮に防衛費をゼロにしても、日本の財政はパンクしてしまうらしい。
共産党の言う「福祉国家を、増税なくして実現=自衛隊廃止」しても、間に合わないのである。
「たしかな野党が必要です」なるほどなぁ。政権とる気がもともとないっいうのは、ラクでいいねぇ。

民主党は、郵政労組が集票組織として大きく占めている。
なんのことはない、労使で「労」票を民主党、「使」票を自民党が分けあってきただけの構図である。
いまや、「労使」などという世界観そのものが、どんなに役に立たない過去の遺物であるか、よくわかるというものだ。そんなものの見方は、この際なんの役にも立たないよ。

自民党が、特定郵便局長の圧力団体「大樹」との関係を断ち切ってまで郵政改革を進めようとしているのは、小泉首相の狂気に等しい信念である。
中身が不十分だという指摘には、私も大いに同意するが、だからといって郵政利権組と一緒になって反対に回った連中も「改革」する気がある、というのは信じるに値しない。(いったん賛成してから修正法案を出していくなら話は別だった)こういうのを、言行不一致という。

たぶん、小泉首相が、選挙に負けて退陣しようが、自民党が下野しようが「郵政民営化が出来なければやむなし」と思っているのは間違いない。悪く言えば捨て鉢、よく言えば腹が据わっている。
それゆえ、強引な員数あわせの候補を各地に送り込む。
たしかに、メチャクチャだ。政治理念なんぞ、これっぽっちもなさそうな人までいる。困るなぁ、と私も思って、おもわずため息をつく。

だけど。「郵政民営化は、大きな政治課題ではない」は、ウソなのである。

財政改革は、どうしても行わなければならない。現在のGDP対比で、国と地方債を合わせた債務は約800兆円で、150%を超えている。この数字は、戦費調達で大量の国債発行を行った大東亜戦争当時と等しいそうである。文字通り、経済敗戦である。
この情勢下で、公務員を削減し、かつ、税収の期待できる民営化を考えるのは、当然のアイディアだろう。毎年7000億円を、どうして無視して良かろうか。
なんで、大きな課題でないものか。

*文中の数字は、WEDGE9月号「日本売りは加速するか」記事中の深尾光洋慶応大教授の研究によるものを参考にしました。