Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

万物理論

万物理論グレッグ・イーガン

ハードSFであり、思い切りSF的なアイディアが使われている。
だけど、この本は、文字通り「万物理論」=(大統一理論)に興味がある人じゃないと「なんでこうなるの?」の疑問が解消されないと思う。

主人公は、あるテレビ番組製作のプロデューサーである。
人工島で3人の科学者による「万物理論」の発表会があり、そのうちの最有力とされる若き女性ノーベル物理学者のドキュメンタリーを製作することになる。
その発表会を妨害するために、科学の発達に否定的なカルト集団がいくつもやってくる。
そのカルト集団が狙っているのは、万物理論を発表する科学者である。巻き込まれた主人公は、、、

というような話。

で、この小説のタネは「人間原理」にあるのだ。

万物理論」とは、一言で言って「相対性理論」と「量子力学」を統一する理論のことである。
簡単に言えば、物理学の基本的な力というのは「重力」「電気力」「強い力」「弱い力」の4つである。
このうち、2つの力「電気力」と「弱い力」は、ワインバーグ・サラム理論によって、すでに統一されている。あと2つ、「強い力」と「重力」を、統一した理論で記述できれば、宇宙の最初期(=ビッグバン)のはじまりまで、我々の歴史をさかのぼることが出来る。(超ひも理論が有名だが、証明はまだまだ先のことらしい)

ところで、この量子力学の世界で有名なのが「人間原理」である。
つまり、素粒子レベルの振る舞いになった場合の話なのだけど、位置と運動量が同時に決定できなくなってしまう、というものだ。
有名な話に「シュレーディンガーの猫」がある。
http://www6.big.or.jp/~beyond/akutoku/etc/joke/sch.html
このとき、量子力学では、箱を開けるまでは、猫は「生きているか、死んでいるか」未決定である、ということになる。猫の生死が確定するのは、人間が箱を開けて「観測」したときに、はじめて定まる。
とすると。実は、物理の諸現象というのは、実は「客観的にあるものを」我々が観測しているのではなくて「我々が観測するから」宇宙が存在するのではないか?!ということなのだ。

もちろん、伝統的な物理学者は、この見解には反対している。アインシュタインの有名な「神はサイコロを振り給わず」というのが、その批判である。

そして、この「人間宇宙論」から拡張したアイディアで考えると。
そもそも物理学者が「宇宙論」を発見し、発表することで、そのような宇宙ができてしまうのではないか?ということなのである。
なんと、ネタバレだ!!

しかし。このアイディア、ネタバレしないと、たぶんよく分からないし、人間宇宙論に詳しい人には、ことさら斬新なアイディアでもないと思う。

すごいSF小説というふれこみだが。
現実の物理学の理論のほうが、どう考えてももっとすごいわな。
こんな小説より、講談社ブルーバックスのほうが面白い、と言ったら小説のメンツ丸つぶれなんだけど。

よって、評価は☆。
つまり、「ネタだけ」ですなぁ。