Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

帝都東京・隠された地下網の秘密

「帝都東京・隠された地下網の秘密」秋庭俊

妄想、という言葉がある。
子どもの頃、天井の木目をずーっと眺めていると、怖ろしい鬼の顔が浮かんできたもんだ。
近所の裏山の細い道をずーっと進んでいくと、山を3つ越えたところに湖があり、そこに秘密基地があると、私を含めた悪童連中は心底信じ込んでいた。

大人になっても、なかなかこのような妄想から抜け出すことは難しいもののようである。
典型的な例で言えば「大人になったら恋愛しないといけない」とか「職業は自分に合ったものでないといけない」など。
いずれも、妄想だが、この種の妄想は他人に害を及ぼすとは言えないから、あまり問題にはならない。

この著者は「東京の地下鉄は戦前にそのほとんどが作られていたものだ」という妄想に取り憑かれている。地図をじーっと見ていると、そのように見えてきてしまう。
営団職員が「いや、もうよいのじゃないですか」と言えば、それが自説への肯定だと聞こえてしまうのである。

そして、このような事実を隠し続けていたGHQも日本政府もけしからん、民主主義への冒涜だといきまく。
率直にいって、なんでここまで思いこめるのか?よほど不思議である。

もちろん、ひょっとしたら、有事に備えたヒミツの地下道が東京にあるのかもしれない。だからといって、それが民主主義を冒涜していることにはならんわい。
普通に考えて、そんなもんがあったとして(在ったとして、だ)バレバレになったんでは、有事の際に役立たんではないか?
ま、あくまで「在ったとして」の話である。

私は、実はこの本で何度も取り上げられている「小竹向原」駅の近所に、昔住んでいたんであるよ。私が学生時代の頃に、ちょうど有楽町線がここまで延伸して、大学へ通うのが便利になった。
そのころ、駅はピカピカだった。
で、まだ拡張工事もしていた。工事現場も見えた。
今見れば、戦前から存在したと思うほど古びてはいるけどね。

人間の脳みそに取り憑いた想念が、どのような物語を紡ぎ出すのか?という良い実例だとは思う。
だけど、ねぇ。。。

評価は無☆。
「妄想モノ」なら、もっと面白い本がたくさんあるって。