Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

霞町 すゑとみ

この店の写真はありません。だって、あまりの凛とした雰囲気に呑まれてしまい、ケータイでカシャなんてやれるもんじゃございませんって。

もとの「分とく山」があった後に、10年修行したお弟子さんの末富さんが出された店。なかなか予約がとれない人気店で、日曜の夜になんとか行った。
「食事だけなら」付き合ってくれる美女を連れて(苦笑)むかし、こういうのをメッシーと言ったなぁ。まあ、それでも、隣に美人がいれば酒もうまいので、文句はないのだ。

先付けは鱧。骨きりが絶妙で、まったく当たらない。さっと湯ではなくダシにくぐらせたらしく、何も付けなくても薄味がおいしい。珍味の子と胃袋もついてくる。
それからじゃこメシ。じゃこがうまい。
あんきもをすり流しにした茶碗蒸し。上にじゅんさいと生ウニが乗っている。食った直後は旨さに絶句したが、よく考えてみれば、この組み合わせだもん。そりゃあ、ねえ。
椀はさまつ。早生の松茸である。見事な薫りで、珍味だという余裕がない。う、うまい~!
お作りはマコガレイ、赤身、タコ。マコガレイがよく脂がのって絶品。この時期はいいねぇ。私はヒラメよりもカレイのほうがさっぱりして、刺身でもうまいと思う。わさびは本わさびを目の前で。
煮物は米なす。「米なすをつくった人ってすごいよね~」と隣の美人が。うん、全くだ。だけど、私に云わせりゃ、米なすを煮た奴もすごいぞ。
焼き物は鮎か太刀魚が選べるので、太刀魚にしてもらった。カウンター内の炭火で焼いてくれる。この焼き具合が絶妙で、したたる脂の甘いこと。皮がほっこりとして、酒を飲むとたまらん。
天ぷらはアワビ。まあ、これは美味くて当たり前。揚げたてを塩で。
最後にごはん。穴子メシにした。横の美人が元気に「お代わり~!」ま、気持ちは分かりますわ。悪い魔法にかかったよう。
デザートはレンコン餅。もちもちと、甘くて美味しい。甘味嫌いの私も思わず感心する。

これは、世評が高いのも頷けるなぁ。若いご主人と奥様、お弟子さん達のきびきびした動きぶりも小気味よし。基本的に、カウンターなので、主人の手元が見えるのだが、実に繊細でよく動く。お料理は、何か聞けば丁寧に教えてくださるが、あまり無駄口をたたくサービスではない。それで、店内にはおのずと凛とした空気が張り詰めるのである。酒を飲んでも、決して乱れてはいかん。そういう店じゃないのだ。

勘定を払って階下に降りると、ご主人と奥様が先回りしてお見送り。「分とく山」と同じ。

最近流行のカウンター懐石だけど、そういう店とは一線を画していると思う。すべての皿、鉢が鮮烈。いや、参りました。

たまには贅沢、なんて気合いに充分応えてくれる店。素晴らしい。☆☆☆だよ。初めての人と常連さんを区別しないので、初訪問でも気持ちよく食事できます。
そしたら、隣の美人が「お店はすごいけど、お客さんがね」「え?!」「いや、他のカップルだけど、みんな女の人がお財布だすんだよ」「ええ!そういえば、ちょっとオバサン(といっても私とおっつかっつくらいだぞ)が多かったかも」「あと、オカマさんでしょ、商売仇さんでしょ」「うん」「いかにも日曜夜の麻布、よねぇ。」
ああ、なんたることか。私が主人の見事なる腕前にホレボレしていたところ、彼女はカウンターの他の客の観察にも余念がなかったというわけである。
これじゃ、歯が立つわけがないのであった。シッポをまいて退散した次第である(笑)