Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

修羅場のマネー哲学

「修羅場のマネー哲学」木戸次郎。副題は「1億5000万円の借金を9年間で完済した男」

90年のバブル崩壊で、日本の株式市場は音をたてて下落。
そのとき、著者は証券マンだったが、他人名義で株式運用をしていた。
総資産は実に6億円。毎日豪遊していたわけである。
それが、一瞬のうちに7億円以上の損害。こわい筋も含めて金を調達し、結局、命と引き換えの1億5000万円の借金を背負う。
おまけに、会社には株式運用がばれて退職。どのみち、証券会社員の給料で、1億5000万円が返済できるわけもない。
著者は、夜はカラオケでアルバイトしながら、昼は自分のビジネスに精を出す毎日となった。

著者が考えた返済方法は投資顧問業である。
お客から資産を預かる。それを運用する。増えたら、その儲けの20%が著者の収入。負けたら、損害は客負担である。
しかし、腕前がよければ依頼者がいる。
証券マン時代の著者の腕を知る太い客が、そのまま投資顧問の客になった。

失われた10年と言われて、相場は下がり基調である。
しかし、著者は中長期投資で、上がる銘柄はあると読む。
著者の読みはオーソドックスなもので、材料を探して業績改善の期待が持てそうなところに投資する。
「なんだ、当たり前じゃん」と思うかもしれないが、バブル時代の著者の銘柄がみんな「仕手銘柄」であったことを思えば、大変化というわけである。
そして、苦節10年弱。ついに、著者はすべての負債を返済する。。。

おもしろいドキュメンタリーである。
評価は☆。

著者の「株の損は株で取り返す」という発想は、格別なものではない。
そもそも、株式投資の原則で、リスクとリターンは比例する。
それだけの大損害を出した市場だからこそ、逆にリターンが生まれるチャンスもあるわけだ。

問題は、すべての人が著者のようにいくわけではないことである。
著者は勝った。しかし、確率的には、同じようにして負けた人もいるはずである。
大方の人は、行方不明になったり、マグロ船から落っこちたり、ダム工事現場で亡くなっていたりするのである。
そういう人には、なぜか多額の保険金がかけられて、必ず事故にあうのであるが、警察が動くことはない。
行方不明者だけでも、年間1000人を超える。

だから、本書は「たまたま勝った」だけの人の話、と思ってもいいかもしれない、のだ。
投資の方法論については、推奨も批判もしない。あくまで、一つの例としてみるべきだろうと思う。

投資というのは、リターンを期待しているときに生じる。
リスクを踏むわけだ。
この「リスク」を踏む行動そのものを、日本人は悪だと思う人が多い。
しかし、問題は、リスクがコントロールできるかどうか、なのである。
リスクがコントロールを超えた場合、失敗すると、破滅的な結果をもたらす。
わかっていても、なおリスクをとる場合もある。
それは、そのままだと「負け確定」な場合である。
多少の希望があるのであれば、リスクをとるべきだ、という判断に傾く。
残念ながら、そういう場合は、ほとんどがその状況に陥ったこと自体が「負け」なので、逆転勝利は望みがたい。
わかっていても、なかなか「見切る」ことはできないものだが。。。

おそろしい「博奕」の話は、むしろそこから、はじまるのであるが、、、それは別の機会にしよう。