Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

靖国参拝と国益について考える

やはり中国が予想通り「靖国参拝」を焦点にしてきました。
またかと思う方が大半だとは思いますが、
「今、中国ともめても日本の利益がないから、靖国参拝は中止した方が良いのでは?」
という見方もあると思います。

心情的・イデオロギー的な見方を離れて、本当に靖国参拝の中止が国益にかなうか否か、私自身が「株式会社日本」の役員になったつもりで考えてみましたが、答えは「ノー」だと思います。むしろ、靖国参拝は(ホントに8月15日に行うか否かは別にして)継続でよいと思われます。

まず、経営戦略はライバル企業の状況を考察することから始まります。
よって、「中国側の国益」を考えます。前提として、外交活動(=企業活動)が、利益のために行われるもの、という見方をとります。
簡単にいえば、中国にとっては、靖国参拝を批判することに利益があるわけです。
たとえば、日本は中国に対するODAをやめようとしようとしていますが、これに対する牽制になります。(実際、ODAの減額を打ち出してから歴史問題をひんぱんに取りあげるようになっていますね)
もちろん、多くの方が指摘されているように、共産党政権に対する求心力の維持もあると思われます。

日本の立場で考えますと、国家財政が破綻の危機に直面し、経済苦による自殺者を年間3万人も出しながら、かつ、巨額の経済支援を中国に行っているリターンを考える必要があります。(この金額があれば、その分自国民が救えることになります)
経済支援を受け取った中国はその資金を軍備増強と第三国へのODAに使っています。
日本の経済支援を中国国民自体が知らない、という問題があるわけですが、この状態ですと、いくら経済支援を継続しても、中国国民の対日感情は改善せず、隣国の軍事力増強につながるだけで、あまり日本に有利な結論になりません。
中国指導部が特別に感謝してくれて、日本に対して優遇措置をしてくれるような展開を期待できれば良いのですが、ちょっと望み薄です。
一方で、経済支援自体は、中国にとっては、大変メリットのある取引ですので、これを中止することは認めたくないに相違ありません。

さて、ここから経営的に考えます。すると「靖国参拝」というのは、企業で言えば一商品か一営業所の扱いの問題くらいで、本当はアジアにおける2つの競合企業のシェア争いに似ていると思われます。つまり、この2国のほかにパワーがある会社がないのです。よって、靖国参拝を考えるのには「株式会社日本」の経営戦略を考える必要があるのです。
そうすると、市場が限定的な場合に減量経営を行ってはいけない、というのがセオリーです。その分他者に浸食されて「じり貧経営」になるからです。いわゆる「リストラ」というのは、リストラしたことによって獲得した資金を、新たな成長事業分野に投資することが可能な場合にとるべき戦略です。そもそも成熟市場(ましてや衰退市場)でそんな戦略をとったら「経営のシロウト」と笑われてしまいます。

対中国も同じで、おそらく靖国問題で譲歩すれば、次には領土や資源、知的所有権、環境問題その他で一層の譲歩を迫ってくることになります。日本にとっては、外交的果実を失っていく「じり貧経営」にあたります。この2国間で、すでに外交的には成熟市場で、強力な第三国の台頭とかアンチ中国のスーパーパワーの出現のような市場環境の変化がありません(もしあれば、中国が戦略の変更を迫られることになるでしょう)
つまり、靖国でもめていれば、日本からすれば、これらの中国の次の要求まで踏み込まれることを回避できます。両国間には、それ以前になお難しい問題がある、と言っておれば良いからです。これは、中国の歴史カードに相当します。歴史カードは「カードを出せば日本が譲歩する=支援の獲得」という前提があれば中国に一方的に有効ですが、「靖国問題」を取り上げるなら応じない、とやれば、カウンターになります。(おそらく小泉首相の狙いは、この歴史カードの封じ込めにあります)靖国を出せば必ずもめますから、歴史カードと同じくらい確実な効果があります。(もちろん、外交を単にゲームとして考えています)

従って、譲歩しないままで当面推移することが、日本の国益にかなっているとも思われるのです。もっと簡単にいえば、もちろん戦争はしないが、うわべの友好を取り繕っても、日本には利益がないですから、ちょっと緊張させておくくらいで丁度良い、ということになります。靖国問題を解決するメリットが、日本には見あたりません。

このようなケースは、企業間のパテント争いなどで、わざと当面和解をせず、裁判で時間を稼ぐのに似ています。問題があれば解決したい、とついつい思ってしまいますが、当面解決しない方が利益であるケースは多くあるのです。

もちろん、これはすべて、中国が現状以上の強攻策をとれない、という判断を基準にしています。
その前提が崩れると、全く違った対応をしなければなりません。
小泉政権が非常に米国寄りの姿勢をアピールするのは、おそらく、そのような意図によるのでしょうね。