Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

よね山

学生時代に近くだったが、なかなか敷居が高くて足を踏み入れられなかった神楽坂。
会社が近いこともあり、また町並みが面白く、昔の仇をとるつもりで、最近たびたび出向く。

さて、神楽坂にも沢山の寿司屋がある。
しかし、すべての要素を排して「うまい」の1点で選ぶとしたら、間違いなくこの「よね山」だろう。
多くの神楽坂ファンも、おそらく同意してくれるのではないか。

神楽坂を上って、大久保通りとの交差点を越えてしばらく。花屋さんの奥に、ひっそりと「よね山」はある。知らなければ、まずたどり着けない店である。
中は、小さなテーブルが一つ。あとは、カウンターだけである。
ご主人は、銀座寿司幸で17年修行して独立。まだ40代なかば、たいへん人当たりが良く、はじめての人でも心配ない。

メニューも値段表もない。すべておまかせ、である。
最初に、酒肴が次々と出てくる。そのすべてが、酒飲みにはたまらん逸品である。
じゅんさいにはじまり、シャコ、車エビ、初鰹。わさびは本わさびを目の前ですりおろす。
わさびのさわやかさに驚き、魚のうまさを堪能して酒を飲む。
ご主人も酒肴をつくるのがお好きなようで「寿司にたどり着く前に終わっちゃう人がいるんですよ」と笑う。
そのあと、いよいよ芸術的な握りが始まる。
季節のシンコからはじまった。。。なんといえば良いか。
食べていくとわかるが、ネタによってシャリの大きさと柔らかさがすべて変わる!
衝撃は本マグロの赤身であった。「これが赤身か?!」と思った。今まで食べた、いかなるマグロとも違うのである。そのあと、中トロの良いところが出たが、確かにうまい。しかし、あの赤身の衝撃にはかなわない。いわゆる、江戸前のヅケの仕事がしてあるのだが、筆舌に尽くしがたいとはこのことである。
カウンターだから、握るご主人の手さばきがすべて見える。芸術だ!
もちろん、寿司幸伝統の「燒椎茸の握り」も出てくる。
最後は巻物でおしまいである。

気がつくと、しらない間に結構食べていることに気付く。「さぁ、どうしましょう?また握りますか?」
笑顔でご主人に聞かれるが、ちょうど良く終わりになる。いくらでも食べられるだろうが、今やめるのが一番うまい、その時間で終わりになるのである。

勘定は一人1万円。あと、酒代がそれにつく、と思えば良い。この値段は安いのではないか。
至極の時間が味わえる。
銀座ほど高くないし、まちがいなく、一流の寿司が食べられるのだ。

神楽坂の奥深さをしみじみと感じる名店であると思う。
これ以上の寿司屋もあるだろうけど、私はこれで良い。ここにくれば、心楽しい時間を過ごせることは間違いないのだ。
近所のベテランOLさんだろうか、お一人で食べにきていらっしゃった。そういう女性が一人でも、見事にカッコよく、カウンターのお客さん同士が知らない間にニコニコと顔を見合わせて会話してしまうような、ほっとした雰囲気がある。しかし、決して下世話にならない。不思議である。

評価は☆☆☆。文句なしである。