Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

風の男 白洲次郎

「風の男 白洲次郎」青柳恵介。
最近、なにかと評価の高い白洲次郎の本である。

白洲次郎は、なんといえばいいのだろうか?
生涯、政治家にはならなかったから政治家ではない。東北電力の会長をやったけど、決して経済人ではない。金儲けがうまかったとか、金儲けに興味があるとも思えない。

若いときから英国に留学。といっても、オイリー・ボーイとしてスポーツカーを吹っ飛ばす毎日だから、今で言う「語学留学」のようなものか。
本人は「カントリー・ジェントルマン」と称していた。日独伊防共協定の前から「日本は戦争になり、必ず食料難になる」と言い、商売を捨てて自ら田舎に引っ込んでしまった。
やがて、予言通りに戦争、日本は敗戦。すると「そろそろ行かねばならん」と東京へ。通訳をしながら、GHQと渡り合う。天皇陛下マッカーサーへの贈り物を持っていったとき(マッカーサーの誕生日で、部屋は贈り物でいっぱいだった)「そこらへんに置け」と言われたとき「敗れたりといえども、我らの国家元首からの贈り物を、床の上にはおけない」と言い返した。マッカーサー慌てて、台を準備したという。

一方で、天皇の戦争責任についても厳しく発言している。サンフランシスコ講和条約が発効したとき「御退位あってしかるべき」と発言している。(もちろん、そのような事を上申するはずもなく、周囲の知己に語ったのであるが)今しか機会はない、ということである。

池田勇人を「頭が良く、飾らない」として評価したが、「おしゃれな服を着て、演説台に斜めに立つようになったらダメだ」と失脚を予言した。田中角栄には「あんたは土建屋のおやじにしか見えないが、それが良いところだ」と妙なほめ方をしたらしい。
ゴルフ場で、運転手に靴の紐を結ばせている大政治家をつかまえて「てめえには手がねえのか!」と怒鳴った。
誰に対しても、常に平等であって「プリンシプル」を重んじた。原理原則、というような意味であろうか。
マッカーサーに対しては尊敬の念をもっていたようだが、「負けた途端に進駐軍に取り入ろうとする日本人の多さには閉口する」とハッキリ言っている。

評価は☆。
話題の「白洲次郎」の人となりを知るには好適な書である。
ただ一つ、老婆心ながら忠告しておくと。
いくら白洲次郎がかっこよいからといって「フツーの人」には参考にならないと思う。間違いなく、この人物は「傑物」なのである。古い言葉で言えば「大人物」なのである。私のごとき凡庸が、恰好だけ大人物のマネをしたら、さぞかし滑稽だろうし、また通用もしない。

若い人よりも、オトナになってしまって、言いたいことも(言わねばならんことも!)言わなくなった(言えなくなった?)私のような人間が自戒するのに向いているかもしれない。
それに気付くと心中複雑である。
風のように生きられない私の、率直な感想はそういうものだ。しょうがねえなぁ、と苦笑いするしかないのである。