Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

きっかけになるか

元角川グループの角川歴彦氏(80)が、国に対して2億2千万円の損害賠償請求裁判を起こすそうだ。例の東京オリンピックで、ドンといわれた高橋にワイロを送った件で「人質司法」に226日も捕まったわけだが、頑として認めなかった。令和の岩窟王である。本人は、日本の人質司法と戦うと言っている。いわゆる国賠訴訟だ。

 

日本の人質司法は世界的に有名である。あのカルロス・ゴーンは逃げ出してしまったが、日本でこそ非難はされるものの、世界的にみたらとんでもない司法後進国なのだから、そんなところで裁判なんか受けられるか!という本人の憤りは理解できる。

 

「おはようございます」と、早朝に警察がやってきたら、そのまま黒塗りのワンボックスに連れ込まれておしまいである。で。早々に携帯を取り上げられるので、どこにも連絡できない。会社では、あなたのことは無断欠勤になるのである。そのまま、ずっと「出社拒否」のまま、である。警察署にいくと、警察官が1箇所だけ、電話を代わりにかけてくれる。それは、知り合いの弁護士事務所である。弁護士に対する連絡だけは、拒否できないから。弁護士の知り合いがいない人は、諦めるしかない。

そのまま、留置場に突っ込まれて、そこで生活が始まる。48時間以内に警察は送検を決める。送検されると、いよいよ被疑者になるわけだが、やっと当番弁護士がやってくる。国選なので、ほかに仕事がない弁護士が多い。どんな弁護士かは、あえて言うまい。まともに稼いでいる弁護士が、刑事の仕事なんかしたいわけがない。

で、そのどっちの味方かわからない弁護士が、やっと知り合いに連絡してくれるのだ。もちろん、その連絡を受けた知人は「あいつ、タイーホされやがった」となって、判決が出る前に、だいたい懲戒免職になるはずだ。判決なんか、待ってるわけがない。この国では、告訴されたら99%有罪なのだから。

で。そこで10日間の勾留が始まる。が、だいたい最初の10日間はほとんど本格的な調べもない。警察は忙しい。で、さらに10日間の勾留延長が決まる。そのたびに、檻のはいったバスでまる一日がかりで裁判所に連れて行かれるのだが、裁判官の前で何をいおうが、勾留延長は決まっている。勾留に対する判断をする裁判官は、司法修習を終えたばかりの新人裁判官がやるのだが、それは「あなたを勾留します」というだけの簡単なお仕事だから、なのだ。業界内では「自動販売機」というあだ名がついている。

よって、23日間。これが、まず挨拶代わり。で、自白しないと、再逮捕されて、ループがもとに戻る。えんえんとこれを繰り返す。

 

よく「自白と保釈は関係ありません」などと、知ったような口を聞くやつがいる。アホなヤフコメ民が、どっかのサイトで読んだ知識で書き込むのだ。それは、有名人だけの話である。どこの刑訴法にも書いていないが、実際には保釈は、裁判所が「弁護士意見」と「検事意見」を聴取する。弁護士は、保釈しろ、というに決まっている。検事は「証拠隠滅の恐れがあるので反対」「しかるべく」の2択なのだ。証拠隠滅のおそれとは、自白してませんということなのだ。で、検事が反対すると、まあ8割がたは、保釈されない。シャバに出たければ。私がやりました、と言え。そういう制度である。

最近では、裁判所が国際的な評判を気にしていて、相手が有名人だと自白してなくても保釈を認めるケースが増えているのだが、一般人には関係ない。

一点だけ、よいほうの情報を言えば、保釈されたときは、だいたい執行猶予がつく判決がもらえる。初犯なら、ほぼかたい。裁判所も検事も、ちんけな犯罪の初犯はさっさと認めさせて処理件数を稼ぎたい。手間かけさせんなよ、どうせシャバには出られるんだから。ま、そういう話。

 

日本の司法制度も、実はGHQ占領下では、ずいぶん違ったのである。まず、取り調べに弁護士が同席できた。保釈もかなり効いた。欧米並みの裁判を目指したのである。さらに、今は検察の起訴独占主義だが、これも改正したいと圧力がかかった。

で、日本が独立すると、あっというまに旧に復した。米国は、何度も日本の司法制度の改革を要求しているが、一向に改善されない。これは、米国軍人の犯罪を日本で裁けない一因とも言われる。

よく日米合同委員会で米国が圧力をかければ日本は言いなりだと言う陰謀論が流行っているようだが、司法制度なんか、何も変わらないぞ。あれは、外圧を言い訳にしている官僚が利用しているだけなのだ。嫌だといったら、何もしない。面従腹背でとおす。その典型が、この人質司法制度である。陰謀論者のいつものテクニック「都合の悪い例は出さない」なんかに、俺は騙されないから。

 

今回の角川氏の国賠が、何かのきっかけになればいいと思う。思うけど、たぶん、無理だろうと思っている。