Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

アンダースロー論


ロッテで、現役で唯一の真正なアンダースロー投手、渡辺俊介投手の本。といっても、聞き書き程度の内容である。
しかし、こりゃ面白い。

野球に詳しい人なら、時速90キロの速球(笑)でアウトをとる渡辺投手は、存在自体が面白いというだろう。
しかし、私が思うのは「人生論」としての面白さである。

つまり。
普通は、投手はオーバースロー快速球を投げ込むものだ、と考えている人は多いだろう。それが、アタマの中にできたパターンである。
人生に喩えてみると、どっかのそこそこ有名な大学を出て、どこかの大手企業に勤めて、、、みたいなイメージである。

渡辺投手は、何もアンダースローだからタマが遅いのではなく、子どもの頃から遅かったのである(笑)ただし、柔軟性は良かった。それで、彼の父親が「このままでは、高校野球で野球部に所属することすら難しい。一年でも長く野球を楽しむためには、アンダースローにするのが良い」といって、下手投げに変えてしまうのだ。渡辺投手自身、「それもそうだ」となってしまう。自覚するくらい「二流か三流の投手」であった。
下手投げなら、とにかく人数が少ないから、なんとか投手陣のなかに入り込めるかもしれない、といった程度の考え方だったのである。
それが、ついにはプロ野球で堂々の先発投手になった。

自分を省みて、やっぱり私もアンダースローの人生だと思うのである。剛速球が投げられれば、それで良かったのだろうが、私はそういう天分に恵まれなかった。
でも、なんとか「試合」に出たい。そう思って、とにかく「ちょっとひねった方法」を探す人生になってしまった。もとより、正面から正々堂々では、通用しないのが私の実力なのである。
しかし、それはそれで、なんとか生きていけている。

実力がない、アタマが悪い、体力がない、家が貧乏だ、要領が悪い、とにかく仕方がないのである。それを嘆いても、どうにもならん。
それならそれで、正面から戦うことを止めれば良いのである。なにしろ、ダメでもともとなのだからね(苦笑)

評価は☆。
たしかに、書物としては、取り立てていうほどの出来じゃない。よほどの野球好きじゃないと、読んでてもつまらん本だろうとは思う。
だけど、投手はタマを投げるのが商売で、本を書くのがヘタくそでも、一向に問題がない。そう、この本自体が、見事な渡辺投手の「アンダースロー」になっているのであるよ。いいじゃないか、うん。