Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ダーク・ハーバー

「ダーク・ハーバー」デヴィッド・ホスプ。

デビュー小説を書いた新人作家が、たとえばハードボイルド・マニアであれば、きっと本書のような小説を書くに違いない。つまり「自分が読みたい小説」を書いた。で、当然ながらよく書けており、同好の士を納得させるだけのできばえである。けれども、だ。なんとなく「どっかで読んだ感じ」が付きまとう。ある種のパターンを踏んでいるわけである。

主人公のフィンは、ある法律事務所のアソシエイト(日本語でいえば、イソ弁といったところか)である。同期の中では実績をあげており、前途は洋々である。
彼は、事務所の同期の女性で、美しく野心家のナタリーと付き合っていた。しかし、今では単なる友人関係に戻っている。ただし、フィンは未練たっぷり。
で、ある日、ひさしぶりにフィンはナタリーと飲みにいき、したたかに悪酔いして帰宅する。なんと、翌日、ナタリーが殺されていたことが判明する。
フィンは悲しみにくれるが、彼女と会った最後の人間がフィンである以上、彼が殺人犯の疑いを受ける立場になる。フィンは、彼に好意をもっている美人刑事と渡り合いつつ、自らが勤務する法律事務新に救援を求めるが。。。

評価は☆。
アメリカのハードボイルド好きであれば、結構気に入る出来じゃないだろうか。一種のデジャブがつきまとうのはいたし方ないけど。

それにしても、弁護士が作家になるというパターン(本書もそう)は、洋の東西を問わず多いんだねえ。日本の代表は和久俊三あたりかな。
アメリカの場合、そもそも弁護士の数が多いということも、関係しているだろうけど。
弁護士が大忙し、よりも、適当に暇があって小説でも書いているほうが(その小説がたとえ殺人事件のオンパレードであったとしても!)良い世の中なんである。

考えてみれば「ハードボイルド好き」も、ずいぶんお手軽で無害なニヒリスト達だといえるわけだ。ニヒリストが「お手軽で無害」になってしまう、、、消費社会とはすごいのだ。