Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

金印偽造事件

「金印偽造事件」三浦佑之。

ちょっと前だけど、考古学会で「神の手」と呼ばれた事件があった。藤村なる人物が、日本の有史以前の遺跡から続々と画期的な発見をして「神の手」と騒がれたのである。
ある夜、藤村自身が、夜中に「何か」を埋めているのが露見。翌日「発見」と騒ぐつもりのところがばれてしまい、実は過去の「発見」もすべて「自作自演」であったと白状した。

本書は、実はあの有名な金印「漢委奴国王」も、実は同じたぐいの話ではないか?と疑問を呈したものである。

犯人は?だが、本書で名指しされているのは亀井南冥。金印発見当時、ただちに「後漢書」との関連を指摘してみせた男である。
亀井は、この件で一躍学者として有名になり、彼の塾(藩校)は大繁盛するのだが、なぜか数年後に廃校になる。その経緯を、亀井はどこにも遺していない。

評価は☆。

たしか高校の日本史の時間だったと記憶しているが、この金印「漢委奴国王」のレプリカが我が校に回ってきた。「金だからな。十分注意して」と云われて手に取ったそれは、ずいぶん重くて美しかった。「金だから腐食しないのだ」と教師は説明した。
だけど、金は柔らかい金属である。土中に何年もあって、今見るように、まったく傷も摩耗もなく保存されるものなのか、自分には判定できない。

ただ、江戸時代の学者にも、相当な考古学の知識があったことは確かである。その気になれば、贋物をつくることは容易かったろう。
金印は、現代の考古学者に対する江戸時代の学者からの挑戦なのかもしれない、などと思ってみたりもするのである。