Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

国家情報戦略

「国家情報戦略」佐藤優 コウ・ヨンチョル

「外務省のラスプーチン」佐藤氏が、韓国のインテリジェンス・オフィサーであったコウ氏との対談本。
ちなみに「インテリジェンス」とは、外交用語で「諜報活動」のことである。

まず、北朝鮮の話題から。
北朝鮮の諜報活動であるが、ルーツは日本の陸軍中野学校であるという指摘。一見、ただの強欲なジャイアンぽい金正日であるが、実は彼のもつ諜報能力は一流ではないか、という。考えてみれば、あの国は経済ぼろぼろ、まともな産業ナシ、ただひたすら海外支援頼みで、それでも国家体制は存続し続けているのであるから、頷けるフシはあるなぁ。

また、諜報活動に関しては「ソフト=人的情報収集」と「ハード=人工衛星や通信傍受など」があるが、日韓ともに「ハード」はすべて米国に頼りっぱなしなのだという。
ま、有事の際には、韓国軍も日本自衛隊も、米軍指揮下のもとで戦うわけである。それは、法律や制度でそうなっているだけではなく、ハードの情報管理がそうなっている。つまり、自衛隊が有事に「米軍の指示によらずに戦う」などと粋がってみたところで、そもそも敵軍がどこでどうしているのか、それを把握する能力すらないのである。
で、たまに米軍が「内緒だよ、こっそり」てな調子で伝えた情報をぺらぺらしゃべる高官がいるので、ますます米国の軍事機密管理が厳しくなってしまうわけだ。これも日韓おなじ(笑)。

評価は☆。
なかなか、示唆があった。

巻末近く、佐藤氏の日本核武装に対する指摘が鋭い。
佐藤氏は、日本の核武装に反対である。もしも、日本が核拡散防止条約を脱退して、核武装したらどうなるか?単純な話、日本にウランを輸出する国が無くなる。ウランの輸出国は、すべて核拡散防止条約に加盟済みだからだ。日本の総発電量の約4割がすでに原発によっているので、たちまち国民生活は窮乏することになる。かつての「石油禁輸」ABCD包囲網と同じ構図になる。
ただし、このままイランが核を持ったとする。(米軍がアフガン駐留を続けるのは、おそらく親パキスタンタリバン勢力がアフガン回廊を通じてイランに核技術を持ち込むのを防止するためだ)すると、必ずサウジがこれに対抗して核武装するだろう。サウジが持てば、シリアが持つ。既に実質核武装済みと言われるイスラエルが、核保有を明らかにする。いわゆる中東の「核ドミノ」である。
こうなれば、もはや核拡散防止条約は、なんの効力もない空証文になるだろう。そのときには、日本の核武装もオプションに入ることになる。

なるほど、と思ったのは「6カ国協議は、日本に核武装させないためにやっている」という指摘である。たしかに、それ以外の目的で「6カ国協議」をする必要がない。日本にとって拉致問題は重要だが(当然だ)他の5カ国は関心がない。国際政治の冷厳な現実である。
しかし、だからといって「他の5カ国と同じ」スタンス(つまり、拉致問題は後回し)にせよ、という主張はないだろう。日本にとって重要な問題だと理解してもらう。理解が得られなければ、2度言う。2度言ってわからなければ3度言う。しまいには「いい加減聞き飽きた」と文句を言われる。文句を言われたら、また言う。しまいには相手も呆れて「ようもそんなに、同じことを言えるもんだ。」と感心してくれる。それでやっと「聞く耳」を持つ。初手であきらめてどうするのだ。

他国を見なさい。みな、そういうやり方でやっていますぞ。