Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

2011年7月24日

「2011年7月24日 テレビが突然消える日」岡村 黎明。

2011年7月24日は、テレビが突然消える日である。いわゆる「地デジ」に完全移行し「アナログ停波」今のテレビの電波は止まる。

本書は、この「アナログ停波」にまつわる問題を提起した書である。

そもそも、電波は「限りある資源」であって、同じ周波数帯で異なる放送局があってはならない。従って、電波法その他の法律によって、電波利用は規制されている。
近年問題となっているのが、携帯電話用の電波である。これだけ携帯が増えると、電波の周波数帯が足りなくなる。そこで目をつけられたのが、テレビの地上波用の電波である。

携帯電波の場合は、すでにデジタル化して、同じ周波数を沢山の人が使えるようになっている。しかし、アナログテレビは、電波の利用効率が悪い。だから、これをデジタル化すれば、電波の空きができて、携帯用の電波も確保できるというわけだ。

しかし、そうなると、従来のアナログテレビ用の電波が止まる。20011年7月24日である。この日を境に、テレビは映らなくなるのだ。

先に述べたように、電波は有限の資源であるから、テレビのデジタル化は先進諸国で既に行われている国も多い。著者は、これら諸外国と比較して、日本のテレビのデジタル化について、以下の問題点をあげる。

1)法律によってデジタルへの全面移行が決まったのだが、その告知活動が不足。特に、「地デジ」という言葉は知っていても、「アナログ停波」を知らない人は多い。
2)諸外国では一般的な「デジタル対応チューナー」が店頭で見かけない。日本では高価な液晶対応テレビの販売ばかり先行している。それに、チューナー自体の価格も高い。
3)特にテレビを主な情報源、また唯一の娯楽とするような高齢者貧困層に対する対策が何もない。

これらの指摘は、まことにもっともなことだと思う。

評価は☆。問題提起の書としては、オーソドックスで良いと思う。しかし、解決は容易でない。

著者は、本書の中でわざわざ一章を割いて「テレビのない生活」を取り上げている。「映らなくなったら、見なければいいじゃないか」という根本的な反論である。これに対して、「日本では、高齢者をはじめとして、テレビが唯一の楽しみ、という人も多い」と言うものの、「テレビのない生活」そのものは否定していない。できないというべきか。以前は、皆そうやって生きていたので、実は困らないのではないか。
日本の家庭では、普通の人でも25インチ以上のテレビを買う。欧州では、テレビは普通は14インチ程度の小さなものである。テレビは、決して生活の主役ではない。それで十分なのだ。日本では、テレビの占める地位が重すぎるように思う。

2011年7月24日から「テレビのない生活」を送るのも、一つの選択肢として悪くないな、などと考えているのである。