Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

四つの雨

「四つの雨」ロバート・ウォード。

ボブは50歳をすぎた心理療法士。68年左翼の生き残りであることを誇りにし、貧しい人たちを無料でカウンセリングすることをやってきた。
しかし、彼の妻との生活は破綻し、ギャンブルに逃避し、そのギャンブルで財産をすっかりなくして、請求書にアタマを痛める生活を送っている。
楽しみは、なじみのクラブで仲間達とギター演奏することだ。

そのバンドの弱点は、ボーカルがいないことだったが、ある日突然、セクシーな女性がボーカルを志願してやってきた。魅力的な彼女に、すっかりボブは参ってしまう。
意を決したボブは、彼女に告白。彼女は、自分もボブは好きだったが、離婚歴があり、前夫のときに貧困で苦労したので、ボブが貧しいという噂を聞いてためらっていたのだと言う。
「そんなことはないさ」ボブは虚言を弄して彼女を射止めるのだが、なんとか貧困からは脱出しなくてはならない。
そこで、彼は自分の患者の中で、もっとも裕福な人物が所有しているという品物を盗み出すことを決意する。。。

評価は☆。なるほど、実によく練られたストーリーである。著者は新人とはいえ、もともとハリウッドの脚本を書いていたらしい。ストーリーテリングのテクニックは堅固である。

思うのだが、日本人作家のストーリーは実に稚いものが多い。理由は簡単で、「練習してないから」である。生まれついての才能のまま、つまり我流でストーリーを組み立てている。我流だから、習作をしてもよくならない。フォームが悪いわけだ。欧米の作家は、ストーリーづくりの基本をキチンと勉強してから
創作にのぞむ。才能は、まずパターンに習熟してからのものだと考える。生まれつき才能があって、それを発揮すればよいなどというおとぎ話を信じない。まずテクニックありきだ。これは、正解だろうと思う。

さて、物語の終盤になって、ボブは自分が父親になろうとしているのを知る。そこで、ボブは大いにとまどうのである。
彼女は、そんなボブにずばりという。
「あなたは、大人にならなかった。いつまでも、自分の居心地のよい夢を見ていただけの身勝手な人間だ。自分が子供だから、子供がいらない。大人になれない。」「子供が、老いと貧困にたじろいで堕ちただけ」それで他人を救うなんてお笑いぐさだというのだ。左翼的理想も、結局は自分が他人を救済する(世の中を導く!)という「居心地のよい自分の世界」から脱出できなかっただけのことよ、と彼女は厳しく断罪する。
(この「勘違い」は、オウム真理教と似ているし、またイスラム聖戦士と同じともいえる。左翼に限らないだろう)

40過ぎて独身男は、このままいけば、50過ぎて独身男になるわけだ。胸のいたむ話である。それだけに、私と同じような境遇にある諸氏は、本書を読むべきじゃないかと思う。自分から目をそらしてはいけないね。いててて。。。