Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

もっと気軽にフレンチへ

「もっと気軽にフレンチへ」藤井美夫。

最近はどうやらビストロブームのようで、あちこちに小さな店が出来ている。たいへん、楽しいことである。
だけど、フレンチは、イタリアンやスペイン(最近バルが流行ってますなぁ)などと比べると、やっぱり敷居が高いと思うのじゃないかな。もちろん、お値段も安くはないわけだし。

で、そういうフレンチ入門者のための本が、本書である。
だいたい「今からフレンチを食べてみたいな」と思っている人が、そもそもミシュラン片手に「さあ行くか」などという事態はないのである。あれは、やっぱり食通向けの本。
そうじゃなくて、今まで外食は居酒屋と蕎麦屋、牛丼に喫茶店という人が、ある日「フランス料理を食べてみたい」と思ったときに役に立つ本。
あるいは「今まで何度かフレンチに行ったけど、肩が凝るばかりで、あんなものは結婚式と立食パーティで充分だろ」という方も多いに違いない。ホテルのフレンチは、無難な味付けしかできないから仕方がない。
「お!こりゃウマイ」という料理にあたったときは幸福であるから、そんなお店を探したいときにはピッタリである。

本書は2部構成になっていて、1部では「気軽なフレンチの使い方」2部はお店ガイド、になっている。
この1部の内容は、とても参考になる。

・食前酒は頼まなくてもいい
・メニューはじっくり悩んでいい、せかされても「今考え中」でいい
・予約は店の前からでも電話しよう
・良い服を着ていれば、良い席に案内される
・店で待ち合わせでいい
・ワインはテーブルワインを利用しよう

私は、実はワイン選びが苦手である。日本酒は一時期凝ったので、かなりの銘柄を飲み、およそ味の傾向もつかんでいる(と思う)。
けど、ワインは正直、とてもカバーしきれません。
で、仕方がないのでソムリエ相手に「ゴニョゴニョ」と好みを並べて、持ってきてもらう。しかし、よくわからない酒に、大枚をはたく気にはなれないわけで、予算も渋くなる。
結果、あまり大して「ウマイなあ」と思うワインに当たらないわけである。
で、著者は言うのだ。「分からないときは、高いワインの価値も分からないのですから、テーブルワインを利用しましょう」
なるほどなあ、と納得。
というのも、今までの経験で「お料理が美味しい」と私が思った店は、なぜかテーブルワインも美味いのである。グラス売りされるテーブルワインは、店の料理とマッチしていないとダメだし、もちろん高くてはダメ。
だから、値段がこなれていて、かつ万人向けの味なのである。といいつつ、やっぱりお店の主観が入るから「大ハズレなし」で選んである。これは納得。
で、結論としては「じゃあ、浮いた予算でテーブルワインをガブガブ飲めるぞ」というものであった(笑)飲んべえは、飲む量が増えると満足するものですなぁ。

装丁は、フレンチレストランのメニューやレシートをあしらったもので、実にセンスがある。薄い本だけど、読みやすくて可愛いじゃないか。
2部のレストランガイドには、ちゃんと言葉の解説がついているのも秀逸だ。
ジュレ=ゼリー」「デセール=デザート」「ポムフリット=ポテトフライ」なんて、英語ならわかるけど、仏語だとわからなくなる言葉も多いのだからね。

評価は☆☆☆。三つ星を、このフランス料理への愛情あふれる著作に捧げたい。


ところで、私の勝手なグルメ記事だけど。
実は、書かないけど、ずいぶん腹の立つ店もあるのですよ。それも、たくさん。
でも、私は、自分が「いいな」と思った店の記事しか書かない。それは、書評と違うところである。
なぜか?この本の中に書いてあるのと、同じ理由である。
まあ、わかりやすく言えば、「美味いものが食べたい」で発展してきた技術なんて、実に愛すべき、可愛いものじゃないか、ということである。
書物は、様々な「思想」や「主張」が書かれるものだ。その「思想」や「主張」は、よかれと思っても争いを起こす場合が往々にしてある。
言いたくはないが、人の「正義」へのこだわりは、いっぽうで必ず摩擦を起こすのである。
料理はどうか?
「あれは美味い」「いや、あれは美味くないじゃないか」そうは言っても、美味いとおもったものは仕方がない。それで終いである。
ならば、それでいいじゃないか。だから、良い店しか書かないのである。悪口を書くことはない。

最近、記事が増えないのは、情熱が続かないのと、あまり良い店が開拓できていないから、、、ということですが。まあ、気に入った店があれば、それでいいじゃないですか。ね。